研究課題/領域番号 |
24740176
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 沼津工業高等専門学校 |
研究代表者 |
駒 佳明 沼津工業高等専門学校, 教養科, 准教授 (00334748)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 素粒子論 / ハドロン物理学 |
研究概要 |
重いクォーク系に適用可能な有効場の理論であるポテンシャル非相対論的量子色力学(pNRQCD)を,軽いダイナミカルクォークの寄与を含む格子QCDシミュレーションによる非摂動論的な結果をもとに解析して重いクォーク系の物理を明らかにすることを目的とし, H24年度は以下の研究を行った。 (1) クォーコニウムの質量スペクトルや波動関数などの諸性質を,量子力学的手法で明らかにするためには,クォーク間ポテンシャルの1/m展開の1次の相対論的補正項,2次のクォークのスピンと運動量に依存する相対論的補正項が必要となる。申請者はこれまでクエンチ近似の格子QCDシミュレーションにおいて,マルチレベルの方法に基づく指数的ノイズ逓減法と,相関関数の関数形を与える遷移行列理論を組み合わせた独自の方法を開発し,相対論的補正項の精密計算を行ってきた。しかし,軽いクォークを含む系では,遷移行列理論の応用は可能であるもののマルチレベルの方法が適用できない。このため,これに代わる新しいノイズ逓減法を確立するために,まず利用可能な計算機の資源を有効利用するための一般的なコードを開発した。特にマルチレベルの方法とランダムゲージ変換の方法を系統的にテスト可能なコードを用意し,カラー一重項状態を効率よく抽出するシミュレーションのテストを開始した。計算コードの開発や解析は申請者の研究室に設置されているパーソナルコンピュータで行った。 (2) クエンチ近似の格子QCDシミュレーションで得られたクォーク間ポテンシャルをもとに,クォーコニウムの質量スペクトルの計算を行った。1/m展開の2次のスピンに依存する相対論的補正項の寄与まで取り入れた解析を行い,特に1/m展開の1次の寄与と2次の スピンのテンソル項の寄与が重要な役割を果たすことを確認した。2つの国際会議でこれらの成果を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大規模数値計算には整備された計算コード群が必要である。メンテナンスが容易でかつ発展的,また計算機の資源を有効利用するためにプラットフォームになるべく依存しないコードが望ましい。H24年度はこの目的のコードの一般的枠組みが完成し,順次アイデア通りに計算を実行することのできるものとなった。また,クエンチ近似のクォーク間ポテンシャルの結果を用いたクォーコニウムの質量スペクトル計算を一部を除いてまとめることができ,最終的に軽いダイナミカルクォークの寄与が入った場合の結果と比較するための下準備ができた。
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今後の研究の推進方策 |
International Lattice Data Grid (ILDG) およびJapan Lattice Data Grid (JLDG) に公開されている軽いクォークの寄与を含むQCD真空の配位を利用して,クォークと反クォークのソース上で定義されたカラー場の強さの相関関数を計算し,クォーク間ポテンシャルに対する1/m展開の1次の相対論的補正項,2次のスピンと運動量に依存する相対論的補正項を計算する。最終的に必要となるカラー場の強さの相関関数には,カラー電場とカラー磁場の様々な組み合わせがあるが,計算可能となった補正項から順次計算を開始する。計算と解析は,大阪大学核物理研究センターのスーパーコンピュータNEC-SX9と購入予定の並列計算可能なマルチコアのコンピュータを用いて行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
H25年度の研究費は,主に並列計算可能なマルチコアのコンピュータの購入とそれにインストールするFortranコンパイラおよび解析ソフト購入のための物品費,また,国際会議に参加して成果発表および情報収集するための旅費として使用する。
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