研究課題/領域番号 |
24740176
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研究機関 | 沼津工業高等専門学校 |
研究代表者 |
駒 佳明 沼津工業高等専門学校, 教養科, 准教授 (00334748)
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キーワード | 素粒子論 / ハドロン物理学 |
研究概要 |
重いクォーク系に適用可能な有効場の理論であるポテンシャル非相対論的量子色力学(pNRQCD)を,ダイナミカルクォークの寄与を含む格子QCDシミュレーションによる非摂動論的な結果をもとに解析して重いクォーク系の物理を明らかにするために,H25年度は以下の研究を行った。 (1) クォーコニウムの質量スペクトルや波動関数などの諸性質を量子力学的手法で明らかにするためには,クォーク間ポテンシャルの1/m展開の1次の相対論的補正項,2次のクォークのスピンと運動量に依存する相対論的補正項の寄与を同時に評価する必要がある。そこで,マルチレベルの方法に基づく相対論的補正項の精密計算により得られていたクエンチ近似の格子QCDシミュレーション結果をもとに,前年度の計算よりさらに計算精度を上げてシュレーディンガー方程式を解き,クォーコニウムの質量スペクトルを系統的に計算した。これにより,1/m展開の1次の寄与が質量スペクトルの再現に重要な役割を果たすことを改めて確認した。 (2) ダイナミカルクォークを含む系の計算に適用し得るノイズ逓減法を確立するために,クォーク-反クォーク間ポテンシャルに対するグルーオンのカラー中間状態の役割をマルチレベルの方法を応用して調べた。これにより,グルーオンの中間状態はすべて同じ寄与を与えること,つまりどのカラー中間状態に着目してもゲージ不変なポテンシャルが抽出できることを発見した。当初はカラー一重項状態が特に重要と考えていたが,この予想を超える結果が得られたため,さらに確認のため重いバリオン系にも適用できる3クォーク系ポテンシャルも同じ手法で調べ,同様の結果を得た。 JPARCで開催された重いハドロンの研究会,格子QCDの国際会議および日本物理学会において以上の成果を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
大規模数値計算のためには整備された計算コード群が必要であり,それらはメンテナンスが容易でかつ発展的,また計算機の資源を有効利用するためにプラットフォームになるべく依存しないものが望ましい。H24年度にこの目的に沿ったコードの一般的枠組みが完成したので,直ちに具体的な計算に取りかかる予定であったが,大規模計算に適した計算メモリの割り付けや並列化計算手法の改良などで予想以上の時間を要した。また,研究実績の概要で説明した予想を超える結果が得られたことにより,その詳細確認と解析に時間を要した。ただ,前者のコード改良の問題はH25年度末に購入したマルチコアのコンピュータで解決できたので,現在,Japan Lattice Data Grid (JLDG) で公開されているダイナミカルクォークの寄与が入った真空配位を用いてテスト計算を進めている。また,後者については非常に興味深い結果なので論文発表を準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
Japan Lattice Data Grid (JLDG) およびInternational Lattice Data Grid (ILDG) に公開されているダイナミカルクォークの寄与を含むQCD真空の配位を利用して,カラー場の強さの相関関数の計算を順次開始する。計算と解析は,大阪大学核物理研究センターのスーパーコンピュータと,H25年度末に購入したマルチコアのコンピュータを用いて行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
H25年度中頃に購入予定だったマルチコアのコンピュータの納品がH25年3月まで遅れ,それに搭載する計算用ソフトと関連する物品の購入を見送ったことが次年度使用額が生じた。 H26年度は,H25年度の残額とH26年度請求分の研究費をあわせて,マルチコアのコンピュータを主軸とした計算機環境の整備,また,国際会議に参加して成果発表および情報収集するための旅費として使用する。
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