研究課題/領域番号 |
24740177
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
祖谷 元 京都大学, 基礎物理学研究所, 特定研究員 (70386720)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 宇宙物理 / 中性子星 / 巨大フレア現象 / 状態方程式 |
研究概要 |
軟γ線リピーターで発見された準周期的振動は、中心天体である中性子星の振動と密接に結びつくと考えられる。一方、中性子星の内部構造に関する統一的な見解は未だ得られていない。その主な原因は、星内部が超高密度となりそのような状況下での物性を地上において実験的に決める事が困難であることによる。そこで、我々は、観測された中性子星の準周期的振動を用いて、中性子星物質の状態方程式への制限の可能性に迫った。この際、標準核密度より高密度となるコア領域の状態方程式の不確定性を取り除くため、中性子星のクラスト領域を星表面から積分する事で構築した。 クラストを構築するにあたり、現象論的な状態方程式を用いた。ここで、地上実験からは制限の難しい、非圧縮率(K0)と核物質の対称エネルギーに関するパラメータ(L)の2つをパラメータとし、星の半径や質量を系統的に変えながら、クラストにおけるズレ振動数を解析した。その結果、ズレ振動の基本振動数は、K0依存性が小さい事が分かった。さらに、観測された最低振動数と、理論的に予想される最低振動数を比較する事で、L>50MeVと言うLに関する天文観測からの制限を与えた。これは、地上実験とは全く別次元の観測的制限であり、非常にインパクトのある結論である。 一方で,クラストのより内側では、中性子の漏れ出しと呼ばれる現象が起こると考えられている。この場合、原子核から漏れ出した中性子は超流動として振る舞うと思われる。そこで、中性子超流動のズレ振動に対する影響を調べた。その結果、超流動の効果で振動数は大きくなる事が分かった。また、理論的に予想される幾つかの振動数を用いて、軟γ線リピーターで観測された準周期的振動数との対応を調べることで、Lに対するより厳しい制限を得ることにも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
軟γ線リピーターで観測された準周期的振動という天文観測を用いて、地上実験では決定の困難な原子核状態方程式に対する制限を与えるという快挙は、宇宙物理学のみならず原子核の分野にも非常にインパクトのある成果である。同じような動機のもと、軟γ線リピーターでの観測事実を用いた核物質状態方程式への制限をアメリカのグループも行っているが、星の振動解析に於いては、我々の手法の方が一歩先を進んでいると言える。一方で、磁気的な振動に関する解析に於いては、2次元波動方程式を解く為の数値コードを作成した。まだ、テスト段階ではあるが時間発展を調べたところ、本研究対象である磁気的な非軸対称振動は軸対称振動の場合と異なり、離散スペクトルの傾向が見られる。今後より慎重な解析を行っていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
強磁場中性子星に於ける磁気的振動に関しては、ほとんどの解析が軸性軸対称振動を対称としたものである。しかし、軟γ線リピータ―において発見された準周期的振動を説明する事には、未だ成功していないことを考えると、これまでの解析を超えた新たな挑戦が必要である。そこで、我々は軸性非軸対称振動と極性軸対称振動に着目する。これまでのテスト計算の結果、軸性非軸対称振動は離散スペクトルである可能性がある。今後、詳細な解析を行い、スペクトル特性を見極めるとともに、新たな振動モードである軸性非軸対称振動の振動数から観測事実の理論的な解明に迫る。更に、現在日本を含め世界中の協力のもと建設/稼働中の重力波望遠鏡に於ける一つの波源候補として強磁場中性子星が適当かどうかを調べるつもりである。そのために、密度変化を伴う極性振動の解析を行い、放出重力波のエネルギーを見積もる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に所属機関を異動したため、計画していた国際会議に出席することができず、未使用金が発生してしまった。この平成24年度の未使用金を用いて、平成25年度に開催予定の国際会議に参加する予定である。 また、平成25年度分の研究費に関しては、当初の計画通り、上述以外の国際会議にも積極的に参加し成果を広く宣伝するとともに情報交換も行う予定である。また、データ解析の為に幾つかのソフトウエアを購入すること、より理解を深める為に宇宙物理学関連の図書の購入も予定している。さらに、これまで共同研究を続けてきたココタス教授(ドイツ/テュービンゲン大学)との研究打合せのためドイツ訪問も考えている。この他、日本国内に於いては、秋と春に日本天文学会、日本物理学会への出席を予定している。
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