研究課題/領域番号 |
24740183
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
土屋 晴文 独立行政法人理化学研究所, 玉川高エネルギー宇宙物理研究室, 客員研究員 (70415230)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 粒子加速 / ガンマ線観測 / 宇宙線 / 雷 / 雷雲 |
研究概要 |
雷や雷雲からのガンマ線を捉えることで、地球内で粒子の加速現象を明らかにしていくことが目的である。そのため今年度は、[1] 新たに装置を3台制作し、柏崎刈羽原子力発電所に設置していく。[2] 新たに捉えたイベントを解析する。という計画であった。[1] に関しては、CAEN の放射線測定モジュール(DT-5720)を購入し、NaIシンチレーション検出器とプラスチックシンチレーション検出器を合わせた測定システムを理研の研究協力者とともに開発してきた。DT-5720は、4 ns でシンチレーション検出器の信号をサンプリングし、その時刻とパルス波高を記録できる。この性能により、当初の目的であった1マイクロ秒の時間分解能でイベントを実際に記録できることがわかった。新たな装置を設置するには至らなかったが、CAENモジュールを取り扱うノウハウは習得できたので、次年度以降の製作に活かせる。[2] において、これまでの観測装置で非常に興味深いイベントが得られた。具体的には、雷が光る前から高いエネルギー(13 MeV)の光子から観測されはじめ、5 ms ほどの減衰時間を持って低いエネルギー(40 keV) が観測された後に、雷が発生するというものであった。さらに、511 keV 近辺にも放射が見つかり、その継続時間が数十 ms ほどあるという奇妙な振る舞いを示した。こうした現象はこれまで観測されておらず、電子の加速が雷が光った後にも連続して起こっている可能性を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の目的では、今年度は放射線測定器とそのデータ収集系を新たに3台制作し、設置予定であった。ところが、平成24年度より、本務先が(独)理化学研究所から(独)日本原子力研究開発機構となったことで、製作が遅れ、一台の製作のみにとどまり、設置には至らなかった。もう一つの目的である、新たなイベントの解析では、これまでに例がない雷からの放射線イベントを新たに一例観測した。このイベントでは、511 keV の放射が見られ、冬の雷にともなって反陽子が生成されているかもしれないことが示されている。現在、解析中である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度より、東大博士課程一年に在籍する大学院生が、この雷実験を協力して進めることになった。そこで、装置製作やデータ解析を分担しつつ、以下のような取り組みを行う。[1] 2012年度に得られた雷ガンマ線イベントの解析、[2] 装置製作と設置。[3] これまでに得られたイベントの解析である。 [1] では、大学院生と協力しつつ、データ解析のみならず、GEANT4を使った大気シミュレーションも行い、イベントの解釈をしていく。[2] においては、今年度新たに導入したCAENのモジュールを使ったデータ収集系の開発をさらに進め、設置していく。[3] では、雷雲からのイベントを系統解析にとりかかる。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度、本務先が変更となったことで、予定していた装置の製作が遅れてしまった。具体的には、方向測定のために必要となる、回転駆動部のメカニカル部分の製作に遅れが生じた。その結果、装置設置やそのメンテナンスのために予定していた現地への訪問が少なくなった。これらにより、次年度使用額が発生した。 次年度においては、従来の装置の形で装置を制作していき、既存の装置を含めて時間分解能を挙げることと焦点をあて、できるだけ遅れを取り戻す。その上で、これまでに得られたガンマ線イベントを元に、電子加速と雷との関係という観点で、解析を進める。その上で、電子の加速パラメータ(加速時間や加速限界、エネルギースペクトル)や加速領域の空間スケールを決定していく。
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