研究課題
これまで柏崎刈羽原子力発電所で続けていた雷や雷雲からの高エネルギーガンマ線の観測では、20例のイベントを発見していた。それらのイベントは通常、継続時間が1秒以下の短時間イベントといわれるものと、典型的に一分ほどにわたる長時間イベントという2つに大別される。ところが、昨年度、これら2つのイベントの特徴をあわせもった現象をはじめて捉えた。具体的には、雷に同期して、装置のカウントが急増し、その後30秒ほどかけてバックグラウンドに戻るというものであった。今年度、このイベントを東大の大学院生(牧島研究室)とともにさらに詳細に解析したところ、そのイベントでは、電子・陽電子の消滅にともなう511 keV のエネルギーをもつガンマ線が、その30秒にわたり検出されていたことがわかった。雷からのガンマ線を測る地上の装置おいて511 keVのガンマ線が観測されたのははじめてのことであった。このイベントから、雷雲で長時間にわたり陽電子が生成されていたことが示唆され、いかにして長時間にわたる生成が維持されたのかを現在、解析中である。上記に述べたイベントでは、設置した検出器が飽和してしまい、雷に同期していたところでは十分なデータが得られなかった。そのため、雷に同期した511 keVの放射があるかないかは不明となった。こうしたデータの取りこぼしを起こさないような改善を現在進めている。その一環として、CeBr(2”X2”)シンチレータを購入し、これを新たな検出器として組み込むことができるようにしている。
2: おおむね順調に進展している
これまでに設置した装置により、511 keVガンマ線が地上の雷雲から放射されていることを新たに発見することができた。これに加えて、データ通信環境も整い、研究協力者がいる東大(本郷)で常にデータを監視できる体制が整った。
[1] 昨年度からの課題であるデータ収集系を十分速いものに刷新していく。これには、CAENのモジュールを使用予定。また、現状のNaIに比べて、時間応答が10倍速いCeBrを用いたシステムの構築も行っていく。[2] 新たにわかった課題として、雷や雷雲からのガンマ線とともに中性子の観測にも取り組んでいく。これには、中性子とガンマ線を分別する必要があり、応用光研の新型のプラスチックシンチレータを使用予定している。
現地からのデータ転送が稼働し、実際に現地に行く回数が減ったため。柏崎刈羽原子力発電所構内では、われわれはLANにつなぐことができないため、H25年度、イーモバイルのデータ転送を使うことでデータを二ヶ月にわたり転送できることを確認した。H26度には、次年度使用額を利用し、観測の間中とぎれない転送方法の構築やあらたな端末の購入する。
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Physical Review Letters
巻: 111 ページ: 015001 1-4
10.1103/PhysRevLett.111.015001