最終年度には、観測システムのアップグレードを行った。具体的には、1台のシステムを用いて、ガンマ線の到来方向を推測できるようにするため、東大の研究協力者らとともに井戸型のBGOシールドに4本の直方体のBGOを入れた検出器を作成・設置した。同時に、阻止能の大きなBGOを使うことで、これまで取り逃がしていたかもしれない微弱なイベントも取得できるようにした。その結果、従来、1冬季シーズンに2-3例の雷雲ガンマ線イベントを取得していたが、今年度には8例のイベントを取得することに成功した。その中には、これまで観測したイベントでも最大の統計数になるものや511 keV ラインの兆候を示すものも含まれ、BGOを用いた検出器が効果的であることがわかった。 H26年度に得られたイベントの解析は現在、進行中である。暫定的な解析結果では、最大統計の光子数が得られたイベントでは、雷雲からのガンマ線が真上方向から2分ほど到来していることが明らかになった。また、ガンマ線のエネルギースペクトルの時間変化を調べたところ、イベントの統計が多い時ほど高エネルギー成分が多くなる傾向があることがわかった。これは、従来、申請者を含む実験グループであるGROWTHが提唱していた雷雲ガンマ線は強くビーミングした制動放射ガンマ線であることを強く支持する結果となった。 H24年度から26年度までに得た結果により、GRWOTH実験では、陽電子生成を示す511 keVガンマ線を初めて地上の観測装置により検出したり、雷雲ガンマ線の到来方向を推測できる手段を得たりするなど、今後の雷雲ガンマ線の観測に大きな波及効果をもたらす成果を得ることができた。
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