研究概要 |
アメリカNASAの小型衛星ミッションであるNuSTAR衛星に搭載した宇宙高エネルギーX線集光望遠鏡を用いて、3つの銀河団(弾丸銀河団、Abell 2256、かみのけ座銀河団)を観測し、粒子加速の証拠となる非熱的なX線放射を探査した。弾丸銀河団では、非熱的な放射は銀河団プラズマからの熱的放射に埋もれていて、有意には検出しておらず、これまでより厳しい非熱的X線フラックスの上限値および磁場強度の下限値を導くことができた (Wik et al., ApJ, submitted)。その他の銀河団についても、現在も解析は進行中ではあるが、同じく非熱的な放射を有意には検出していない。 銀河団以外に、NuSTAR衛星を用いて、粒子加速の兆候のある自転の速い白色矮星を持つ連星系 AE Aquarii を観測した。しかし以前に報告されたパルス幅の狭い放射は見当たらず粒子加速現象を追認できなかったが、代わりにパルス幅は広く比較的温度の低い放射を見つけた。そして観測した放射は、標準的な降着柱からの放射モデルでは表せず、それを降着率の低い場合まで拡張することで説明できることを示した (Kitaguchi et al., ApJ, 2014)。 その他にも、NuSTAR衛星で超新星残骸カシオペア座Aを観測して、爆発時に合成されたチタン-44の崩壊により放射される高エネルギーX線輝線の画像を初めて撮像し、そのいびつな分布から星が非対称に爆発したことを突き止めた (Grefenstette et al., Nature, 2014)。私は輝線検出有意度を最大にするイベント選別を考案したこと、輝線プロファイルを正確に決めるために焦点面検出器の高エネルギーX線の輝線応答を較正したこと、および日本語のプレスリリースを行うことを担当した。
|