研究実績の概要 |
本研究は、宇宙硬X線集光望遠鏡をNASAの小型衛星NuSTARに搭載して打ち上げ、銀河団からの硬X線を過去最高の感度で撮像分光し、銀河団スケールで起きている粒子加速の証拠となる非熱的な放射を探査すること、および銀河団同士の衝突によりどれほど高温までプラズマが加熱されるか調べることを目的とする。 NuSTAR衛星は2012年6月の打ち上げ以来、3つの銀河団を観測した。弾丸銀河団から良質なX線データを得たものの、そのスペクトルは従来の銀河団プラズマからの熱的放射で説明ができ、非熱的X線フラックスの上限値および磁場強度の下限値を最も厳しく導いた (Wik et al., ApJ, 2014)。残り2天体でも、視野外からの迷光など望遠鏡の応答を調査中だが、同じく非熱的および超高温なX線を有意に検出してない。 銀河団以外に、NuSTAR衛星を用いて、粒子加速の兆候のある白色矮星を持つ連星系 AE Aquariiを観測した。しかし以前に報告された狭パルス放射は見当たらず粒子加速を追認できなかったが、代わりにパルス幅は広く今までより高温の硬X線を見つけた。観測スペクトルは、標準的な降着柱からの放射モデルでは表せず、それを降着率の低い場合まで拡張することで説明できることを示した (Kitaguchi et al., ApJ, 2014)。 その他にも、NuSTAR衛星で若い超新星残骸を2つ観測して、爆発時に合成されたチタン-44から出る硬X線輝線を検出し、その空間分布や中心エネルギーの赤方偏移から、星が非対称に爆発したことを突き止めた (Grefenstette et al., Nature, 2014、Boggs et al., Science, 2015)。私は輝線検出の有意性を高めるため、焦点面検出器の応答モデルを作成したことおよび日本語のプレスリリースを行うことを担当した。
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