研究課題
若手研究(B)
本研究は全天X線監視装置MAXIがとらえ続けている、謎のX線閃光がスペクトルのソフトなガンマ線バーストであり、閃光の後にはガンマ線バーストと同様の残光が存在することを明らかにすることである。他の衛星では観測されないこれらのX線閃光は、これまで追跡観測もほとんどされないままになっている。そこで本研究では、MAXI の速報を限界まで早め、迅速な追跡観測を促進する計画である。平成24年度は上記の計画に沿って速報を精密化するために自動解析システムの開発に取り組んだ。具体的には、速報のためのデータ処理を行う計算機を導入し、その上で動作する位置決定ソフトウエアの開発を行った。また、X線残光を観測できるSwift衛星との連携は本研究計画の2つ目の柱であったが、これに関しては、SwiftでMAXIのX線閃光の追跡観測を確実に行えるように、Swiftチームのメンバーと協力して、Swift衛星の Guest Investigator プログラムにMAXIのX線閃光の追跡観測を提案し、採択されている。更に、MAXIのX線閃光の残光を地上や衛星による追跡観測でとらえ、その振る舞いを調べること、起源天体までの距離を決定するために、国内外の協力者の存在は欠かせない。平成24年度は国内の学会で2回、研究会で1回、海外の研究会で1回の口頭講演を行ったほか、国内の研究会で1回ポスター発表を行い、これまでの研究成果を発表するとともに、MAXIのX線閃光の追跡観測のよびかけを行った。
3: やや遅れている
平成24年度中に行う予定であった、位置決定ソフトウエアの開発は、現段階で完成に至っておらず、やや遅れている状況にある。一方、Swiftとの連携の強化や、追跡観測の呼びかけに関しては、観測提案や学会発表の機会を有効に生かして、進めることができた。
平成25年度はまず、遅れている位置決定と情報公開の迅速化のためのソフトウエアを完成させる。計画当初は、位置決定と情報公開とを別々に考えており、情報公開の部分は外部の業者に作成を依頼する予定で予算を確保していた。しかし、検討の結果、既にMAXIチームで利用している「オンデマンドデータ公開」のソフトウエアの一部を応用することで比較的簡単に実現でき、専門の業者に発注する必要がないことが判明した。そこで、位置決定から情報公開までをまとめて行うソフトウエアとして、MAXIチームの学生と協力して開発を進める。また、現在までに観測したデータをまとめたMAXIによるガンマ線バースト(X線閃光を含む)のカタログ論文を準備中で25年度中に出版する計画である。このほか、前年度に引き続き学会や研究会で成果を発表し、追跡観測への協力をよびかける予定である。更にMAXIの観測データの包括的な調査によって、ガンマ線バーストのように短時間で変動する天体現象がどの程度存在し、それらの起源にどのような天体が考えられるかについての調査を開始する。
24年度の計画段階ではwebでの情報公開のためのソフトウエアを外部業者に依頼するための資金を確保していたが、既存のソフトウエアの簡単な改修で必要な機能を得られ外部に発注する必要がなくなったため未使用の研究費が出た。この未使用分は、MAXIのデータから短時間で変動する現象を探査するための解析に使用する計算機を購入するため25年度に使用することとする。この計算機は最初の申請時に購入を計画していたが、研究費の配分額決定後に予算不足のため計画を変更して購入を見送っていたものである。また、解析したデータ等の保管のためのハードディスク購入、国内・海外でMAXIの観測成果を発表し、追跡観測をよびかけるために旅費、MAXIによるガンマ線バーストのカタログの論文を出版するための費用は当初の計画通りに使用する。
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the European Astronomical Society Publications Series
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Publ. Astron. Soc. Japan
巻: 64 ページ: 91-1~91-5