本研究は、全天X線監視装置MAXIが観測する突発的な天体現象である「X線閃光」の起源を知るため、Swift衛星などの望遠鏡を用いて迅速な追跡観測を行い、発生源までの距離を知ることを目的としている。 H27年度は、MAXIでガンマ線バースト等の短時間の突発天体を19イベントとらえ、速報を行った。このうち、本研究の対象である「MAXIでしか検出されないスペクトルのソフトなもの」は5イベントあった。追跡観測は5イベント中3イベントで行うことができ、いずれも残光もしくはその候補を検出することができた。とくに2015年12月12日のイベントでは、可視光の残光も発見でき、このスペクトルが一般的なガンマ線バーストと似ていることもわかった。この観測で、可視光でも検出されたことから、赤方偏移が3を超えるような遠方で発生している可能性は否定される。また、未だ距離が決定されていないその他の対応天体についても、X線残光の位置をもとに可視光で追跡観測を行い、母銀河を発見できれば、距離を決定できる。 更に、可視光望遠鏡による追跡観測の協力体制作りも進めることができた。協力開始後、観測可能な位置に現れた8回のうち5回で観測を行った。これまでのところ有意な検出はないが、MAXIの広い誤差領域をカバーできる貴重な観測であるので、上限値の報告を行っている。 なお、本研究からの波及効果として、継続時間の長いX線バースト現象の追跡観測や、重力波対応天体のMAXIでの探査が挙げられる。本研究の中で開発した速報システムを応用することでこれらの成果を得ることができた。
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