研究概要 |
原子核はスピンとアイソスピンで特徴づけられる核子からなり、その構造をしらべるためには、これら二つを同時にかえるガモフ・テラー(GT)遷移強度を測定する手法が非常に有用である。本研究は、逆運動学の中間エネルギー(p,n)反応を用いてGT遷移強度分布を測定し、この測定量におけるダイニュートロン相関など二核子相関の役割を調べることで、スピン・アイソスピン自由度対称性(SU(4))の破れ・回復のメカニズムを明らかにすることを目指している。 2013年度は、アイソスピンが大きく偏った132SnでのGT遷移強度を測定するために、RIKEN RIKBFにおいて132Sn(p,n)反応測定の実験を行った。近年中性子過剰のSn核の中性子スキンにおいて、2中性子の空間的相関が強い状態が起こりうることが示唆されている。これは11Liなでの軽核においてみられるダイニュートロン相関現象が、より大きく一様な核物質である中性子スキン内でどのように発現しうるかという点で、非常に興味深い。2013年度に行った実験はそのような中性子スキン内での2中性子ペアをSU(4)空間で回転させた際の応答をみることに相当する。また、132Snは陽子数50、中性子数82の魔法数からなる2重閉殻核であり、そのGT遷移強度を測定することは、当該原子核のみならず、周辺の原子核のスピン・アイソスピン自由度にかかわる構造を理解するうえで、重要である。本科研費を使用し、この実験を遂行するための中性子検出器の開発をした。 現在実験データを解析中であり、2014年度中に出版を行いたいと考えている。
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