研究実績の概要 |
ガモフ・テラー(GT)遷移は、原子核を特徴づけるスピンとアイソスピンを同時に一単位ずつ変化させ、それ以外の原子核の波動関数の空間成分は変化させない。本研究は、逆運動学における中間エネルギー(p,n)反応を用いて、GT遷移を中性子ドリップライン近傍核で誘起させ、その領域に特徴的な性質である二核子相関のスピン・アイソスピン集団性に対する効果を明らかにすることを目指している。すでに期間内に、代表的な二核子相関核11Liにおける実験計画が、理研RIBFにおいて承認された。本科研費を用いて作った実験セットアップをもとに、その準備を進めている。
また期間中に上記セットアップを用いて132Sn(p,n)反応実験の解析を行った。この解析で、原子核の集団性があらわになってくる中重核領域で初めて、GT巨大共鳴のピークを同定した。11Liと同じく、132Snはそのアイソスピンが大きく偏っている。また、132Snの中性子スキンでは、11Liにおける二中性子相関のように、部分系がクラスタリングを示しているという予測がある。このため11Liおよび132Snでアイソスピンの偏りと、SU(4)対称性の回復が、それぞれGT巨大共鳴の形成にどのような役割を果たしているかを解明する予定である。132Snにおける予備的な解析結果は、アイソスピンの偏りがGT遷移の集団性に与える影響が大きいことを示唆している。最終的な結論を得るために、現在解析をフィックスするとともに、論文投稿のための準備を進めているところである。
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