研究課題
[最終年度に実施した研究の成果]平成26年11月に、理化学研究所RIビームファクトリー(RIBF)において、質量数160~170近傍の希土類同位体(原子番号62~68)の崩壊核分光実験を実施した。これらの核種は、安定同位体と比較して中性子数が非常に多い放射性同位元素(中性子過剰核)であり、数百ミリ秒から数十秒でベータ崩壊する。自然界に存在する約270種の安定同位体のうち、鉄より重い元素の約半分は、非常に中性子密度が高い環境下でこのような中性子過剰核を介してごく短時間のうちに合成されたと考えられており(r過程)、本研究対象の原子核は、質量数160近傍に現れる希土類元素ピークの形成において重要な役割を果たすと考えられている。本研究では、核子当り345メガ電子ボルトに加速したウラン238の核分裂/破砕反応により中性子過剰な希土類同位体を生成し、同位体分離装置を用いて分離・輸送した後、最終焦点位置に配置した両面分割型シリコン半導体検出器とゲルマニウム半導体検出器-EURICA-を用いてベータ崩壊の半減期、および崩壊に伴い放出されるガンマ線を測定した。また、マイクロ秒程度の寿命を持つ励起状態(アイソマー)を、ビームとの遅延同時計測により同定した。[研究期間全体を通じて実施した研究の成果]研究期間内に実施したEURICAを用いた一連の研究により、中性子過剰核の半減期に関する学術論文2編、核構造に関する論文7編を誌上発表した(内2編は筆頭著者)。これら中性子過剰核の崩壊・構造に関する情報は、r過程元素合成の天体シミュレーションを構築する上で重要な基礎となるものであり、最終年度に行った実験で得られる成果と合わせ、重元素領域まで含めた元素合成過程の包括的理解が進むと期待される。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 5件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 3件) 備考 (1件)
Physical Review Letters
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http://www.riken.jp/en/research/rikenresearch/highlights/7866/