本研究は真空中に単一電子を取り出し、その電子をイメージングするための基礎的な技術を開発するというものである。紫外(UV)光を仕事関数の小さいUV光標的に照射することで、光電効果によって単一低速電子を放出させ、その電子を二次元検出器(MCP)に よってイメージングする。時間構造および波長域の小さいUV光源およびUV照射標的をうまく選定し、さらにエネルギー情報も捉えることで単一電子イメージングを可能なものとするという計画である。UV光源としてXeフラッシュランプ、UV照射標的として銅ワイヤーを 用いた簡単な試験は行っており、単一電子検出を示唆する結果は得られている。 今年度は、主に新たなMCPシステムの構築を進めた。また、UV光源・照射標的の選定を進めた。MCP読み出しシステムの改良を行い、より複数ヒットイベントの分離、すなわち単一電子のよりきれいな検出のためにマルチパッド読み出しを採用した。このマルチパッド読み出しにすることにより多チャンネルの電圧供給および信号取り出し機構が必要となったため、それを達成できる新たなカップリング基板を作成した。一方、MCPシステムを動作させるためには真空装置および真空チェンバが必要となるが、元々使用していたそれらが、所属等が変更したために使えない状況になっていた。そこで新たなチェンバ等を導入し、真空試験を行った。以上をあわせ、新MCPの動作試験を行うというところまで至った。UV光源および照射標的システムのコンパクト化に向け、UVLEDの試験の準備も進め、MCPと合わせた試験をできる状況にまで至った。 完全な実証までは進められなったが、新たなMCPシステムの構築、試験、およびコンパクトなUV光源準備まで進めることができた。最終年度に達してしまったが、現在も試験を進めており、この結果については今後の学会等で発表する予定である。
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