研究課題
若手研究(B)
本研究では、2014年度からの観測が予定されている、国際宇宙ステーション日本実験棟に搭載予定の高エネルギー宇宙線観測装置CALETによる一次電子・陽電子観測を目的としている。本年度は、CALETの主観測装置であるカロリメータの観測精度向上のための準備研究として、装置較正方法および計算機シミュレーション高精度化の研究を実施した。カロリメータを構成するシンチレーション検出器の較正方法として、UVパルス光を利用する手法の研究を行った。CALETでのエネルギー決定に重要な全吸収カロリメータを構成するPWOシンチレータおよびPD/APD素子を組み合わせた検出器の評価のため、UV-LEDや窒素パルスレーザーを利用し、発光波長、6桁のダイナミックレンジおよびクロストークの測定が可能なことを試作検出器を用いて確認した。UV光に可視光が混入することが分かり、より精度を上げるために今後可視光の除去方法の検討が必要である。本研究結果をもとに、次年度に予定されるフライト実機検出器較正のための試験装置を製作し、較正試験を実施する予定である。また、高エネルギー宇宙線に対する観測装置応答の計算機シミュレーション精度向上のための基礎データとして、観測装置のアライメントの評価や電子回路の特性確認を実施した。加速器ビーム試験によるデータに加え、これらの結果を取り入れることで、シミュレーションによる事象再現精度の向上が期待できる。
2: おおむね順調に進展している
今年度は主として、カロリメータを構成するシンチレーション検出器の較正試験のための研究を実施し、窒素パルスレーザーを用いた手法により較正が可能なことを確認した。可視光の混入成分の解決が必要ではあるが、フライト実機の完成が見込まれる次年度、本手法を用いた較正試験を行うことが可能な目途がついた。
次年度は、UVパルス光による信号較正試験に加え、宇宙線ミューオンを利用した最小電離信号による較正試験を実施する予定である。ミューオンのデータから、エネルギーおよび検出器位置の較正を行う。また、次年度予定されている打ち上げ後、高エネルギー陽子の最小電離信号による装置較正を行い、地上でのミューオンによる較正結果との比較を行う。これらの測定データを装置応答の計算機シミュレーションに取り入れ、データ解析の精度の向上を図っていく。
UVパルス光による較正試験の準備として、可視光成分除去方法の研究を行う予定であり、そのために必要な機材等を追加で購入する。また、光電子増倍管、シンチレータを購入し、宇宙線ミューオン試験等に用いる。シミュレーションモデル構築のため、3DCAD等のソフトウェアを購入する。
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宇宙航空研究開発機構研究開発報告
巻: JAXA-RR-11-008 ページ: 17-46