本研究では,ハロゲン架橋白金錯体と光磁性体CuMo錯体を中心とし,量子多体系における光キャリア注入の効果を理論面から詳細に調べた。前者に関しては,光誘起相転移の方向性の発見,およびそれを応用した電子相の光純化の可能性を見出した。また後者に関しては,現れ得る電子状態の網羅,光磁性現象の微視的描像の確立,光誘起状態の特異性の発見を成した。特にCuMo錯体では,光照射が“隠れた(平衡状態では実現しない)電子相”を誘起し得ることを示した。 本成果は,平衡・非平衡状態と光励起の基礎物理学的関連および物質の光機能について新たな知見を与える。
|