研究課題
クラスレートや充填スクッテルダイトなどの籠状物質において、ゲスト原子が行う低振動数の大振幅振動はラットリングフォノンと名付けられ、応用・基礎の両観点から精力的に研究されてきた。一部のクラスレートでは、結晶であるにも関わらず、ガラスに普遍的に見られるものと同様の熱伝導率と比熱の温度依存性を示す物質が存在する。その振る舞いに大きな寄与を持つラットリングフォノンは1THz以下の低振動数を持つため、ゲスト原子の安定点が籠の非中心位置にあるI型Ba8Ga16Sn30と、中心にあるI型Ba8Ga16Ge30、VIII型Ba8Ga16Sn30に対し、それぞれテラヘルツ時間領域分光(terahertz time-domain spectroscopy: THz-TDS)によって遠赤外分光を行った。そして、その非調和フォノンの振る舞いや、中心型と非中心型ラットリングフォノンの相違、それとキャリアとの相互作用を、得られたTHzスペクトルによって明らかすることに成功した。また、近年開発・実用化された手法である非同期光サンプリング方式による超高速THz-TDSと、チェレンコフ型ブロードバンドTHz光源を組み合わせて用い、0.1~7THzの帯域における誘電体、ソフトマター等の複素誘電率を決定することに成功した。特に、一軸性強誘電体のLiNbO3、LiTaO3に対しては、透過型と反射型のTHz-TDSを組み合わせることにより、クラマース・クローニッヒ変換などの理論補正を用いずにフォノン構造全体の複素光学スペクトルを決定することに成功した。従来、直接決定が困難であったテラヘルツ帯の高精度フォノンスペクトルを実験的な補正を用いることによって直接決定したことは、今後、高反射率を持つ強誘電体等のTHz帯フォノンダイナミクスの研究の進展に大きく寄与すると考えられる。
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