研究課題
本年度は構築した光第2高調波顕微システムを用いて強弾性体であるチタン酸カルシウムのドメイン境界構造評価を行った。強弾性体は本来中心対称性を有するため、光第2高調波は発生しない。しかしながら、ドメイン境界においては酸素欠損などにより対称性が低下し、極性を持つ可能性が理論的に示唆されていた。本研究ではこの点に着目をし、ドメイン境界の3次元構造観察を行った。得られたSH強度は通常の強誘電体に比較して10^-8程度と非常に微弱ではあったが確かに極性を示していることを明確にした。また、その対称性を決定することに成功した。このことは本質的には非極性な物質においても界面では極性をもつ可能性があることを示唆している重要な結果であるといえる。現在は、応力を印加することでドメイン境界を動かし、動的挙動を明らかにすることを目指し、実験を行っている。また、これと並行して薄膜実験の方では歪誘起による準安定相構造に着目をし、六方晶ErFeO3薄膜の成膜および構造・物性評価を行った。この系ではバルクの状態では斜方晶系が安定相として存在するが、薄膜化することにより基板からの応力により六方晶系が安定化する。これにともないマルチフェロイックス特性が発現すると考えられている。本研究では磁化測定・メスバウアー測定および強誘電特性評価・誘電測定を行うことにより、室温で強誘電性を示し、また低温において強磁性的な振る舞いを示すことを明確にした。このことに関しては現在論文を準備中である。
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