研究課題/領域番号 |
24740214
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
松浦 徹 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60534758)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 電荷密度波 / 超伝導 / トポロジー |
研究概要 |
異方的な電子構造を持つ遷移金属カルコゲナイド擬一次元導体は、電荷密度波状態を基底状態に持つことで良く知られている。電荷密度波状態は、超伝導状態と類似して、電子格子相互作用により電子とホールがペアを作りフェルミ波数の2倍の波数に凝縮する。電荷密度波の運動は、もともと量子的な起源にも関わらず、秩序変数の位相の自由度が、外部電場に応答する古典力学的粒子とみなすことで理解されてきた。これは現実の電荷密度波系(の結晶)では、サイズが有限であり、また有限な不純物を含んていることによると考えられる。無限に大きな結晶を作ることは不可能であるが、系をリング状にすることで、周期境界条件により実効的に無限サイズに出来ると考えられる。我々は電荷密度波結晶のリングを作成し、リング中での電荷密度波ダイナミクスを調べている。 これまでの研究では、電荷密度波リング結晶として、室温で電荷密度波を示すNbS3、典型的な電荷密度波物質であるTaS3の二種類を作成し、その電気伝導測定を行った。リング結晶は直径が数10マイクロメートル、肉厚が数マイクロメートルあるため、ミリメーターサイズで有効な導電性ペースト等を用いた電極付けや、数マイクロメートルサイズで有効な電子ビームリソグラフィー法をそのまま用いることができない。本研究で、電子ビームリソグラフィー工程を見直し、高い成功率で電極作成を行う方法を確立した。 また、リング状結晶中の電荷密度波の運動を無電極で調べるために用いる、自己検知カンチレバーの基礎的な実験を行った。その結果、極低温ではカンチレバー自身(カンチレバーのたわみを電気抵抗に変換する部位)の物性が、大きく変化することが分かった。これらの知見をもとに、測定の方法を詰めていく途上である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カンチレバーによる基礎実験を行い、また、並行してNbS3リング結晶の電気伝導測定を行う基礎技術を確立した。
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今後の研究の推進方策 |
カンチレバー上にリング結晶などの微小試料を取り付け、カンチレバーの共振周波数が温度、外部磁場、外部電場によって変化するかどうかを検証する。カンチレバーを強制振動させる機構、またカンチレバーの振動を測定するシステムを構築する。また、引き続きリング結晶の電気伝導測定を行い、年度前半に結果を論文にまとめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
精密電流計(Keithley 6485) 270千円 消耗品(電子部品等) 230千円 旅費 300千円 H24年度未使用額(63651円)は、年度末-年度始切り替え時に緊急に購入が必要な場合を想定して残したものである。今年度、消耗品(真空部品・電子部品)購入のために使用する予定である。
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