研究課題/領域番号 |
24740222
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
笠原 裕一 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10511941)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 電界誘起超伝導 / 電気二重層トランジスタ / 超伝導対称性 |
研究概要 |
本研究は、近年注目を集めている電界誘起相転移現象について、その材料および物性の飛躍的な展開と電界誘起超伝導の基礎物理の理解を目的とし、材料探索および探索手法の開発とデバイス特有の構造非対称性と強電界に由来する反転対称性の破れた電界誘起超伝導状態について、反転対称性の破れの及ぼす影響を解明する。このような目的のもと、平成24年度には(1)「電気二重層キャパシタのその場磁化測定」による電界誘起相転移の探索、(2) 電界誘起相転移検出のための新手法の開発、(3) 酸化物ヘテロ接合二次元電子の電子状態の解明、を行った。以下、各項目の成果の概要を示す。 (1)「電気二重層キャパシタのその場磁化測定」による新しい電界誘起超伝導物質の発見には至っておらず、トランジスタ構造で電界誘起超伝導物質が発見されたものであっても、非接触検出するには至らなかった。(2)そこで、スループット向上のために新しい探索手法、「平面コイルによる磁場侵入長測定」を開発した。これにより、既に電界誘起超伝導が報告されているMoS2において、非接触検出に成功した。本手法は探索に有用なだけではなく、磁場侵入長測定の精密測定から超伝導ギャップ構造の決定が可能であり、反転対称性の及ぼす影響を調べることが可能となった。(3)酸化物ヘテロ接合界面に形成される二次元電子の性質はほとんど明らかになっておらず、電界誘起超伝導の舞台ともなる酸化物界面電子系のミクロな電子状態の解明が必須である。そこで、MgZnO/ZnOヘテロ接合二次元電子系においてマイクロ波応答を詳細に調べ、電子相関効果が顕著に現れ、電子有効質量が大きく増大することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電界誘起量子相の探索について、応募者は「電気二重層キャパシタのその場磁化測定」を開発し探索を行ったが、新たな超伝導体は発見されず、スループットの向上には至らなかった。しかしながら、より検出感度の高い手法の開発を並行して行い、実際に探索手法としてだけではなく、反転対称性の効果を超伝導対称性を通じて調べることが可能な「平面コイルによる磁場侵入長測定」の開発に成功した。したがって、研究の進捗は計画通りではないものの、予想の範囲であり、計画書に示した対応をとることによってリスクを軽減することができた。次年度に向けた研究進捗状況はほぼ計画通りとなっている。また、酸化物界面電子系の電子状態を解明するなど、当初は予期していなかった成果もあり、研究目的の達成のために必要なデータ収集を行うことが出来た。したがって、当初の計画は概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度において「平面コイルによる磁場侵入長測定」の開発、電界誘起超伝導の非接触検出に成功したことを受け、平成25年度には上記手法による材料探索を推進するとともに、磁場侵入長の精密測定を行い反転対称性の超伝導に及ぼす影響を明らかにする。 さらに、超伝導/常伝導/超伝導接合(SNS接合)を用いたパイ接合・エッジ接合を作製し、超伝導波動関数の位相成分の角度依存性を通して超伝導対称性を決定する。電界によらずスピン一重項超伝導となる物質、鉛やニオブの超薄膜(<10 nm)について、上記のパイ接合・エッジ接合を作製し、強電界前後での対称性の変化について検証する。反転対称性の破れの大きさは物質の構成元素質量によっても決まるため、電場の強さ・物質依存性により反転対称性の破れの超伝導状態に及ぼす影響を解明する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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