研究課題/領域番号 |
24740226
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
中野 智仁 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (60507953)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 国際情報交換 |
研究概要 |
斜方晶でb軸方向に層状構造を示す重い電子系化合物CePtSi2において,申請者らは, 2009年に, 圧力誘起超伝導を示す事を明らかにした。 その後, フラックス法による単結晶試料育成に成功し予備実験を行ったところ, 本物質は超伝導のみならず, 巨大な磁気抵抗効果, 異方的な近藤散乱をも示すことが明らかになってきた。 本研究課題では, 純良単結晶試料を用いて極限環境下における詳細な物性測定を行い, これらの起源と相関を解明することを目的としている。以下に平成24年度に実施した研究の成果を列挙する。 (1) CePtSi2純良単結晶試料の確立, 最適化 単結晶育成条件を検討し, フラックス法による純良単結晶育成の効率化を行った。 その結果, 1 mm弱の単結晶試料育成に成功した。 また, 試料作成の成功確率を向上させた。さらに関連する希土類化合物の作成にも成功した。 (2) 圧力下電気抵抗測定: ピストンシリンダー型圧力セルを用いて, 全ての結晶軸 (電流 J // a, b, c軸)に対して2 GPaまでの圧力下精密電気抵抗測定を行った。 これにより, 電気抵抗が示す近藤効果による2つの山の圧力依存性が明らかになり, 価数揺らぎの可能性を示した。 また, J // a軸に対してはキュービックアンビルセルを用いて8 GPaまでの電気抵抗測定を行ない, 3 GPa以上で近藤温度の急激な増大を示すことを明らかにした。 (3) 磁場中物性測定 : 24年度は磁場中電気抵抗測定および磁気抵抗測定を行った。 磁気抵抗効果はc軸方向の磁場では巨大であるが, b軸方向の磁場では非常に小さいことを明らかにした。 また, c軸方向の磁場で低温側の近藤散乱が抑制されることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は重い電子系化合物CePtSi2における圧力誘起超伝導, 巨大な磁気抵抗効果,異方的な近藤散乱の起源および相関を明らかにするために, 純良単結晶を用いた物性測定を行う。 今年度は主に, (1) CePtSi2純良試料の育成, (2) 圧力下電気抵抗測定および(3) 磁場中物性測定を行う計画であった。 一部, 難航した箇所もあったが, あらじめ計画していた対処法で対応することができ, 概ね順調であったといえる。 以下にその結果の概要を示す。 (1) CePtSi2純良試料の育成 : 試料の大型化を試み, 1 mm弱の試料育成に成功した。これは,当初の大型化目標(1.6 mm程度)には届いていないが, 試料への端子付け技術の向上および量産によって対応した。 また, 関連する希土類化合物の作成も行い, 基礎物性測定を行った。 (2) 圧力下電気抵抗測定 : 異方性を明らかにするために電流 J // a, b, c軸に対して2 GPaまでの圧力下精密電気抵抗測定を行った。フラックス法で育成したCePtSi2は直方体型に近く(a>>c>b), b軸方向の測定は難航した。しかし, 本研究費によって購入した顕微鏡を用いる事によって端子付け等の技術が飛躍的に向上し,測定を可能にした。 (3) 磁場中物性測定 : 計画通り, 磁場中電気抵抗測定および磁気抵抗測定を全ての結晶軸に対して行った。 さらに, ホール効果測定を行う予定であったが, 本学の液化機の不調などにより次年度に行うことになった。 そのため,25年度に行う予定であったSiをGeに置換した試料の育成を前倒しで開始した。 また24年度から25年度にかけて行う予定である磁場中比熱測定は現在準備すすめている。
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今後の研究の推進方策 |
25年度には,24年度に培った技術を用いて, より高度な極低温高圧力高磁場下の多重極限化での物性測定行い,CePtSi2の圧力誘起超伝導,巨大な磁気抵抗効果,異方的な近藤散乱を総合的に理解する。そのため以下の課題に絞って効率的に成果を出す。 (1) 元素置換系物質の作成 物理圧力では不可能な負の圧力効果(体積膨張)を得るために,元素置換を行う。予備的な実験(多結晶試料)からSiの数%のGe置換によって,体積膨張と反強磁性転移温度の増大と近藤効果の抑制が得られることがわかっており, 元素置換した系の基礎物性を測定し格子定数増大と近藤効果の異方性の関係を明らかにする。 さらに圧力下での物性測定を行い, 結晶構造と近藤散乱の関係, 近藤効果や磁気揺らぎをコントロールした状態での散乱機構とキャリア濃度の変化を明らかにする。 圧力を正負に振ることによって,本質的な圧力効果の抽出が可能となる。 (2) 多重極限化電気抵抗測定 極低温,高圧,高磁場下での電気抵抗及びホール効果測定を行う。これらによって外部パラメーターによる超伝導相とその近傍の電子状態の特性の詳細を明らかにする。 CePtSi2の超伝導相近傍では磁気相の消失(磁気揺らぎ), 価数揺らぎ, 非フェルミ液体状態, 近藤温度の急上昇, 残留抵抗の急降下が僅かな圧力範囲によって起こるため, これらと超伝導を関連づけることが難しい。 磁場や元素置換および異方性を利用して, これらを分離し超伝導相形成に必要な要素を特定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本学におけるヘリウム液化機の不良のために, 24年度は寒剤を用いた物性測定に遅れが生じた。 そのため,25年度に該当研究費を寒剤(液体ヘリウム-1000L)に当てる。
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