研究課題
最終年度及び研究期間全体を通じて、ビスマス(Bi)系層状合金における圧力誘起超伝導の探索および物性測定用ダイヤモンドアンビルセルの測定環境の整備を行った:1)トポロジカル超伝導の候補物質であるCuyBi2Se3のSeサイトを一部Te置換したCu0.25Bi2(TexSe1-x)3においてTe置換量1%と10%の単結晶試料(以下、x=0.01と0.1)について低温高圧下電気抵抗測定を行い、およそ10万気圧以上で超伝導転移を発現することを明らかにした。さらに、x=0.01では超伝導に寄与する結晶構造の探索を目的として、室温高圧下で放射光X線回折を行った。その結果、10.9万気圧から単斜晶系の高圧結晶相が形成されることが判明した。超伝導が発現する10万気圧以上の領域において抵抗率の温度依存性は単調な変化を示し、中・低温域で構造相転移を示唆するような振舞いはみられない。ゆえに本研究では、10万気圧以上で観測される超伝導は、室温下同圧力領域で観測される高圧結晶相に起因すると結論付けた。2)トポロジカル絶縁体Bi2Te2Seでは、圧力誘起超伝導が8万気圧以上で発現する。このとき常伝導領域の電気抵抗率は、低圧側から続いて高いままであり、構造相転移前であると推測される。実際に本研究で9万気圧付近から構造相転移が始まることを観測しており、それに伴い抵抗率が大きく減少することを明らかにした。ゆえに1)の場合とは異なり、Bi2Te2Seで8万気圧に観測される超伝導は、高圧結晶相ではなくトポロジカル絶縁体相(常圧結晶相)に起因する可能性が考えられる。3)物性測定用ダイヤモンドアンビルセルを用いた試料準備および測定環境が整備され、数十万気圧領域までの低温高圧下電気抵抗測定が可能となった。まず従来の固体圧力媒体を用いたセットアップで試料を充填し、およそ25万気圧まで実際に試料の加圧に成功した。また、その一連の作業内容を通して絶縁被膜ガスケット作製に係る必要条件を探索した。
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Journal of Physics: Conference Series
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Journal of the Physical Society of Japan
巻: 82 ページ: 045002(1-2)
10.7566/JPSJ.82.045002