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2013 年度 実施状況報告書

微視的理論と現象論の融合によるエキゾチック超伝導の研究

研究課題

研究課題/領域番号 24740230
研究機関新潟大学

研究代表者

柳瀬 陽一  新潟大学, 自然科学系, 准教授 (70332575)

キーワード超伝導理論
研究概要

現在の物性物理学ではパリティ(空間反転対称性)が欠如した系におけるエキゾチックな量子現象が注目を集めている。一方、大局的にみると空間反転対称性が保存していても、ある部分に注目するとそれが破れているような物質、つまり局所的な空間反転対称性が欠如した物質が数多く存在する。このような系では、空間的に非一様な反対称スピン軌道相互作用が現れる。我々はこのスピン軌道相互作用により新種のエキゾチック超伝導相が実現することを明らかにし、複素ストライプ相と名付けた。そして、CeCoIn5とYbCoIn5を積層した人工超格子においてこの相を実現することが可能であることを提案した。これまでの超伝導研究は大局的な対称性によって分類されてきたが、この研究成果により、局所的な対称性の破れが誘起する超伝導相の存在が明らかになった。
さらに、局所的な空間反転対称性が欠如した物質における電気磁気効果を調べた。本研究ではそのような結晶構造の代表的な例である3次元ジグザグ格子を考え、電流により反強磁性モーメントが誘起されることを示した。久保公式を用いた計算により、大局的な空間反転対称性が欠如した系の電流誘起スピン分極と比べて遥かに大きな電気磁気効果が起こる、という結果を得た。電気磁気効果に対する一つの直観的な理解として、その逆効果についても議論した。特定の反強磁性秩序が自発的に起こるとき、バンド構造が非対称に歪む。このとき自発電流は流れないが、逆に散逸的な電流が流れる時には反強磁性が誘起されるということとを示した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本研究課題の成果として、局所的な空間反転対称性が欠如した結晶には特有のエキゾチック超伝導相が存在することが明らかになった。そのような超伝導相の存在はこれまでに知られていなかった。この成果は、日本物理学会が発行する英文誌Journal of the Physical Society of Japan (JPSJ) の"Papers of Editor's Choice"に選定され、2013年7月5日付け科学新聞2面で報道された。この点からも分かるように、研究コミュニティに対して与えたインパクトは大きい。これらの点から、本研究課題の進展は当初の計画以上に進展していると判断する。

今後の研究の推進方策

これまでに行った研究で発見した複素ストライプ相の実現に向けて、実験グループと協調して今後の研究を進めていく。その点で,人工超格子CeCoIn5/YbCoIn5 が良い研究対象になるだろう。この物質では超格子構造をある程度人工的にコントロールできることが魅力的である。最近の研究では,CeCoIn5 のブロック層内で空間反転対称性を破る超格子構造が作成され,グローバルなパリティがない超伝導と局所的なパリティがない超伝導を連続的につなぐ試みも行われている。このように制御性が良いことを利用して複素ストライプ相を実現する物質設計をすることが今後の課題である。

次年度の研究費の使用計画

25年度は本研究課題の研究協力者である大学院生が交代したため、大学院生が研究成果を国外で発表する機会がなかった。また、研究代表者である柳瀬自身も海外出張する機会が少なかった。さらに、論文の別刷り代等を想定していたよりも安価で済ませることができた。これらの理由により、当初予定していたよりも研究費の使用額が少なかったが、全体的に経費を効率的に利用することができた。
26年度はフランスのグルノーブルで開催される国際会議SCES2014に研究協力者である大学院生が複数参加し、研究成果を発表する。そのための費用として60万円を計上する。他に国内出張旅費として60万円、研究成果を発表する際に用いるノートパソコンの購入費として40万円、研究協力者である大学院生に支払う謝金として40万円を計上する。また、論文を出版する際の費用として30万円を使用する。その他雑費と合わせて研究費を有効に使用し、これまでに得た研究成果を進展させ、その成果を広く発表する予定である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2013 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Complex-stripe phases induced by staggered Rashba spin-orbit coupling2013

    • 著者名/発表者名
      T. Yoshida, M. Sigrist, and Y. Yanase
    • 雑誌名

      J. Phys. Soc. Jpn.

      巻: 82 ページ: 074714/1-6

    • DOI

      10.7566/JPSJ.82.074714

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Magneto-Electric Effect in Three-dimensional Coupled Zigzag Chains2013

    • 著者名/発表者名
      Y. Yanase
    • 雑誌名

      J. Phys. Soc. Jpn.

      巻: 83 ページ: 014703/1-8

    • DOI

      10.7566/JPSJ.83.014703

    • 査読あり
  • [学会発表] 多層系人工超格子における複素ストライプ相の理論研究

    • 著者名/発表者名
      渡辺達也,柳瀬陽一,吉田智大
    • 学会等名
      日本物理学会 第69回年次大会
    • 発表場所
      東海大学湘南キャンパス、平塚市
  • [学会発表] 3次元ジグザグ格子系における電気磁気効果と電流誘起反強磁性

    • 著者名/発表者名
      柳瀬陽一
    • 学会等名
      日本物理学会 2013年秋季大会
    • 発表場所
      徳島大学、徳島市
  • [備考] 柳瀬研究室の研究業績

    • URL

      http://bussei.gs.niigata-u.ac.jp/~yanase/study.html

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公開日: 2015-05-28  

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