異なる性質を持つ電子の自己組織化により形成される本質的不均一状態を理解し、この状態の制御による外場応答との結合を目指した研究を推進してきた。具体的には、(a)電子物性を担う伝導面の決定、(b)本質的不均一状態の正体・起源の解明、(c)本質的不均一 状態の制御の3つの課題に取り組む計画であった。 (a)電子物性を担う伝導面の決定においては、紫外光電子分光(UPS)法を予定しており、単結晶試料の清浄表面が必要である。試料合成の熱処理過程を改善することにより、良質な試料の育成条件の確立できた。(b)本質的不均一状態の正体・起源の解明について昨年度は巨視的プローブを用いて迫った。今年度は微視的手法を用いてこれらの統一的解釈に取り組んだ。具体的には、59Co核種のNMR法により、Coの局所磁性に関する情報が直接得た。結晶学的には1つのコバルトサイトからなるにもかかわらず、複数のスペクトルが観測された。これは電子状態の異なるコバルトが存在することを意味し、本質的な不均一状態の形成が示唆された。(c)本質的不均一状態の制御については、原子の自己組織化を利用した有機・無機複合材料の創製に成功し、これが1次元2量体構造を有することがわかった。このように、自己組織化は電子のみならず原子についても有効で、新物質の創製にも展開できることがわかった。
|