研究課題/領域番号 |
24740234
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
田中 清尚 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 招へい研究員 (60511003)
|
キーワード | 高温超伝導 / ストライプ秩序 / テラヘルツ |
研究概要 |
本研究では、当初1年目にテラヘルツ波の発生と検出に用いる光伝導アンテナを購入する予定であった。しかし、これまでも使用してきた光伝導アンテナの国内唯一の生産販売会社が、生産販売を中止したために、2年目に購入予定であったエンコーダ付きの高精度遅延光学ステージを先に購入するという計画の大きな変更があった。2年目となった今年度は、1年目に購入できなかった光伝導アンテナを購入するため、海外の新しいメーカーを含めて購入先の検討を行った。海外の研究者との意見交換も行い、最終的に光伝導アンテナとシリコン半球を一体モジュールとして販売を開始した浜松ホトニクスの製品を購入した。一体モジュールであるため、光伝導アンテナとシリコン半球の物理的な隙間がなく、テラヘルツ時間領域分光のスペクトルに存在した本質的でないピーク構造を除去することに成功し、反射率の絶対値の精度向上に成功した。 また反射型テラヘルツ時間領域分光では測定中の試料位置をモニターすることが非常に重要となる。そのため新たに焦点距離の長い(~10cm)レーザー変位計を購入し導入した。試料直前の集光ミラーにレーザーを通すスリットをあけることで、試料表面に直接レーザーを照射することが可能となり、試料表面の位置の精密なモニターに成功した。高温超伝導体(La,Sr)2CuO4の測定を行ったところ、世界で初めて超伝導転移に伴う反射率の位相成分の変化を直接観測することに成功した。またその振る舞いにキャリア濃度依存性があることもわかってきた。 さらに放射光施設SPring-8においてストライプ秩序を有する高温超伝導体(LaBa)2CuO4のX線円二色性実験を行った。T=50K近傍に異常がみられ、電荷秩序の形成を示唆する結果となった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目に光伝導アンテナを購入できない状況になってしまったため、研究計画の大きな変更があり、2年目に購入予定であった高精度遅延光学ステージを先に購入することになった。2年目には検討の末、光伝導アンテナの一式を購入することができたため、最終的にはおおむね研究は順調に進んでいる。光電子分光の実験がやや遅れているがビームタイムを分子科学研究所の放射光施設UVSORで確保することができたため問題はない。
|
今後の研究の推進方策 |
現在、反射型テラヘルツ時間領域分光装置で高温超伝導体(LaSr)2CuO4の反射率の位相成分を直接観測にできるまで改良を進めることができている。今後ストライプを有する(LaNdSr)2CuO4での位相の測定を行う予定である。また角度分解光電子分光測定を放射光施設UVSORで行い、テラヘルツ時間領域分光との比較を行うことで、ストライプ秩序の本質的な電子状態を明らかにする予定である。 結果は学会等で発表し、学術論文の形にまとめる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究は順調に進んでいるが、オムロン社製レーザー変位計の購入時に予定外の割引があり、16,421円を次年度に繰り越すこととなった。 論文執筆時に必要な身の回りの物品の購入に充てる予定である。
|