研究課題
梯子の足方向に強磁性相互作用を有するレッグフェロラダー3-Cl-4-F-VのClをBrに置き換えた3-Br-4-F-Vに関して低温磁気状態を詳細に調べた。第一原理分子軌道計算から3-Cl-4-F-Vと同様なレッグフェロラダーを形成していることを明らかにした。一方で3-Cl-4-F-Vとは異なり反強磁性的な梯子の桁方向相互作用が比較的強く、5 T程度の比較的大きなゼロ磁場ギャップを有していることが分かった。温度磁場相図においては、磁場誘起長距離秩序相よりも高温側に非自明な相が観測された。NMR測定における緩和時間の温度依存性においては相境界において二段階の発散的傾向が見られ、非自明相では各サイトのスピンの成分が部分的に秩序している可能性が示唆された。また、長距離秩序相におけるスペクトルにおいては内部磁場の連続的な変化が見られ、非整合な磁気秩序状態を形成していることが明らかになった。これらの結果から、梯子間の磁気相互作用にフラストレーションが生じていると考えられた。新たに合成に成功した3-I-Vにおいても、3-Cl-4-F-V及び3-Br-4-F-Vと同様な分子配列を持つことからレッグフェロラダーの形成が予想された。実際に第一原理分子軌道計算の結果から相互作用の大きさを見積もり、強磁性的な梯子の足方向の相互作用が比較的強いことが示された。さらに、他の2つのラダーとは異なり、隣接する桁方向を対角に結ぶような強磁性的相互作用の存在が示唆され、梯子内でのフラストレーションの可能性が考えられた。磁気測定においては、他の2つのラダーで観測されたような逐次相転移は見られない一方で、飽和磁場近傍に非自明な相が出現した。強い強磁性相関の寄与と低次元的なフラストレーションの効果で、飽和磁場近傍にスピン多極子相関による秩序相が現れていると考えられた。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)
Journal of Physical Society of Japan
巻: 83 ページ: 033707-1-4
10.7566/JPSJ.83.033707
巻: 82 ページ: 074719-1-6
10.7566/JPSJ.82.074719
Physical Review B
巻: 88 ページ: 174410-1-6
10.1103/PhysRevB.88.174410
巻: 88 ページ: 184431-1-5
10.1103/PhysRevB.88.184431
http://www.p.s.osakafu-u.ac.jp/~yhoso/topic/b26Cl2V.html