研究課題/領域番号 |
24740242
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
町田 理 東京理科大学, 理学部, 助教 (60570695)
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キーワード | 鉄系超伝導体 |
研究概要 |
鉄系超伝導体Fe1+dTe1-xSexの母物質相における異方的な電子状態が背後にある反強磁性秩序と結晶の対称性とどのような関係があるかを明らかにする事が本研究の第一段階の目的であった.これに関しては,局所的な磁性不純物として存在する過剰鉄近傍での電子状態を調べることによって,明らかにすることができた.具体的には,過剰鉄近傍において,電子状態が二等辺三角形状に広がっており,この形状の対称性が背後にある反強磁性秩序の対称性と合致していることを見出すことができた.この結果は,この系の電子状態が背後にある反強磁性秩序と密接な関係にあることを示唆している.さらにこの系では,各鉄サイトで強いフント則が存在し,この強いフント則を考慮した過剰鉄と各鉄サイト間の二重交換相互作用を基に電子のホッピングプロセスを考えると観察された二等辺三角形状の電子状態をうまく説明することができる.さらに,昨年度の本研究において明らかにした母物質における一次元状の電荷秩序の形成もこのホッピングプロセスと矛盾しない.また理論研究によると,このホッピングプロセスがこの系の母物質におけるab面内電気抵抗異方性を生み出す可能性も示唆されていることから,各鉄サイトにおける強いフント則がこの系の電子状態を理解する上での重要なパラメータであることを見出せた. 我々はこの考え方の妥当性を検証すべく電気抵抗のab面内異方性も測定し,理論的に示唆されいる方向と同じ方向の異方性を確認し,この理論の妥当性の検証がなされた. また非常に良く似た,電子相図を示すIr1-xPtxTe2における電子状態の測定も行い,こちらも母物質のIrTe2において一次元状の異方的な電子状態を示すことを明らかにできた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度では,温度可変高安定STMの作製と評価,母物質Fe1+dTeにおける異方的電子状態の起源を明らかにする事,Fe1+dTe1-xSexにおける電子状態のSe濃度依存性,類似物質であるIr1-xPtxTe2における電子状態の探索を行う予定であった. まず温度可変高安定STMを完成させることができ現在その性能評価を行っている.また母物質Fe1+dTeの電子状態の異方性に関しては過剰鉄サイト近傍における電子状態マッピング等により,詳細な情報を得ることができた.Se濃度依存性に関しては現在進行中である.一方で,類似物質のIrTe2においても一次元状の異方的な電子状態を明らかにすることができた.このように当初の予定より,若干の遅れはあるものの概ね順調に推移していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度に引き続き,温度可変STMの性能評価を行い,高安定化を目指した改良も随時行っていく.現在稼働中のSTMを用いて,Fe1+dTe1-xSexにおける電子状態のSe濃度依存性,類似物質であるIr1-xPtxTe2における電子状態のPt濃度依存性等を調べ,母物質相における電子の一次元状の秩序と超伝導と微視的にどのような関係にあるのかを明らかにしていく.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額29,520円は,学会参加のための旅費及び,物品購入費が当初予定した額よりも安価であったため生じたものである. 次年度使用額29,520円を実験実施のための消耗品費にあてがう予定である.
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