本研究では,電荷,スピン,軌道自由度が絡み合う鉄系超伝導体において,この系の電子物性を支配する機構の解明を目的として,Fe1+dTe1-xSexにおいてSTM測定を行いその電子状態を微視的に調べた.その結果,母相ではEF近傍の状態密度が実空間で,反強磁性秩序のスピン反並行方向沿って一次元状に変調していることと,過剰鉄近傍における電子状態の対称性が背後にある反強磁性秩序の対称性と合致することも見出した.これらの結果は、各鉄サイトにおける強いフント結合を考慮した電子ホッピングモデルでうまく説明ができ,この系の電子物性が鉄サイトでのフント結合の強さで特徴付けられるという結論を導き出すことができた.
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