研究課題
電極につながれた一次元バンド絶縁体における非線形伝導について調べ、特に負性微分抵抗が生じる起源を理論的に明らかにした。この研究は、前年度に行った有機導体β-(meso-DMBEDT-TTF)2PF6に対する計算で得られた負性微分抵抗の起源を、より一般的な観点から明らかにした成果である。ここで考慮した系は、電極の自由度と、電圧印加で生じる絶縁体内部のポテンシャル勾配を持つ。電極とバンド絶縁体の内部で電子間相互作用がないと仮定し、非平衡グリーン関数の方法により電流電圧特性を厳密に計算した。その結果、電極のバンド幅が有限の場合、あるいは電圧によるポテンシャル勾配がある場合には負性微分抵抗が生じることが分かった。このことは、電子間の非弾性散乱がないことから理解できるため、電子間相互作用を平均場近似で取り扱った場合にも同様な結果が得られると期待でき、実際に前年度の研究と整合する結果となっていることが分かった。負性微分抵抗に関しては、電極につながれた部分がひとつのサイトから成る系(ポイントコンタクトモデル)でこれまでよく調べられてきた。そこでは電子間相互作用がない場合には、電極のバンド幅が無限大のいわゆるWide Band Limitの極限では負性微分抵抗が生じないことが示されている。今年度の研究の成果は、ポイントコンタクトモデルをバンド絶縁体に拡張すると、その内部のポテンシャル勾配によっても負性微分抵抗が生じることを示した点にある。非弾性散乱の効果がどのように負性微分抵抗に影響するかは今後の課題であるが、この研究によってこれまでの非線形伝導および負性微分抵抗に関する理論研究を、より一般的な立場から理解することが可能になったと考えられる。
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Journal of the Physical Society of Japan
巻: 83 ページ: 124704 1-4
http://dx.doi.org/10.7566/JPSJ.83.124704
Nature Communications
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