研究課題/領域番号 |
24740246
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
土屋 聡 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 研究員 (80597633)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 超伝導ゆらぎ / 有機超伝導体 / 強相関電子 / 2次元性 |
研究概要 |
本研究の目的は、2次元性の効果に着目し、強相関電子系超伝導における重要な未解決問題である、位相ゆらぎ超伝導の起源、転移の性質を明らかにすることである。特に申請者らがこれまでに発見した面内磁場による位相ゆらぎ超伝導の起源を明らかにするために、電子相関、次元性の異なる超伝導体を用い、面内磁場中での電気抵抗、磁気トルクの系統的な精密測定を行う。そしてTc近傍で精密なI-V測定を行うことで転移の性質を調べ、KT転移(位相無秩序化シナリオ)の直接的証拠を得ることである。 初年度はこれまで得られた相図をさらに発展させるため、低温、強磁場領域の広いで磁気トルクと電気抵抗の角度依存性の精密測定を行った。特にk-(BEDT-TTF)2Cu(N(CN)2)Brに対して測定を行い詳しく解析を進めることが出来たため、超伝導ゆらぎの発現に有効電子相関は関連しないことを明らかにすることができた。この結果はネルンスト効果測定の結果と矛盾しており、ネルンスト効果の解釈に問題が残っていることを明らかにしたと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度の目的である、k-(BEDT-TTF)2Cu(N(CN)2)Br、NbSe2に対して十分な測定及び、詳細な解析を行うことができた。またそれぞれ論文にまとめ出版することもでき、初年度の研究目的はほぼ達成したと考えている。さらに当初の計画にはなかったa-(BEDT-TTF)2NH4Hg(SCN)4(超伝導転移温度~1K)、銅酸化物超伝導体Bi2Sr2CaCu2O8+x(超伝導転移温度~100K)超伝導転移温度がそれぞれ1ケタ異なる超伝導体に対しても測定を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は初年度で得られた相図を詳細に比較し、面内磁場中での位相ゆらぎ超伝導に対する熱ゆらぎ、次元性の効果を明らかにする。そしてk-(BEDT-TTF)2Cu(N(CN)2)Br、k-(BEDT-TTF)2Cu(NCS)2に対し、面内磁場中で精密なI-V測定を行うことでこの転移の性質を調べ、KT転移(位相無秩序化シナリオ)の直接的証拠を得る。また初年度で新たに測定したa-(BEDT-TTF)2NH4Hg(SCN)4、銅酸化物超伝導体Bi2Sr2CaCu2O8+xの解析を引き続き進め、超伝導ゆらぎに対する熱ゆらぎ効果を新たな課題として詳細に調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
これまで手元にある機器でI-V測定を行ったところ、明確なKT転移の証拠を得ることは出来なかった。そこでさらに精密でSN比の高いI-V測定を行うための計測機器を購入する予定である。磁気トルク測定に必要なマイクロカンチレバー、抵抗測定に必要な金線、カーボンペースト等は常時必要な消耗品を購入する。また国内外の学会で研究成果の発表を行う予定であり、そのための旅費、外部の共同実験施設への実験のための旅費を計上する。
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