研究課題/領域番号 |
24740253
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
小野田 繁樹 独立行政法人理化学研究所, 古崎物性理論研究室, 専任研究員 (70455335)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 量子スピンアイス / 量子スピン液体 / ゲージ場 / イリジウム酸化物 / トポロジカル絶縁体 |
研究実績の概要 |
パイロクロア格子構造をもつ希土類(Pr, Yb, Tbなど)局在磁性体は、量子スピンアイス系と呼ばれ、磁化の単極子(モノポール)が量子性を担って物質中を運動していると考えられてきている。我々は、その最も基本的な理論模型に対して、量子モンテカルロ計算を行い、熱力学量、中性子散乱スペクトルの温度依存性を世界で初めて詳細に明らかにした。降温とともに、まず、Paulingの残留エントロピーと双極子的磁気相関で特徴づけられる古典スピンアイス領域にクロスオーバーをする。さらに冷却すると、エントロピーを徐々に解放し、量子スピンアイス領域にクロスオーバーする。そこでは、モノポールが量子的運動エネルギーをもち、基底状態において擬光子を生成するために必要なゲージ場のコヒーレンスの発達が磁気相関プロファイルから確認された。量子スピンアイス領域でのスピン相関は擬光子による寄与だけでなく、希薄なモノポールの相関による寄与が残ることが分かった。 Yb2Ti2O7における非弾性中性子散乱スペクトルを説明する理論の構築、Tb2Ti2O7の中性子散乱・磁化率等を説明する理論模型パラメータの導出に成功した。 パイロクロア・イリジウム酸化物に対して、前年度までの相対論的局所スピン密度近似LSDA法による第一原理電子状態計算を発展させて、オンサイトクーロン相互作用による強い電子相関の効果を取り込んだLSDA+U法の計算を行った。その結果、Pr2Ir2O7は反強磁性相に近い常磁性半金属となり、Y2Ir2O7は正四面体頂点上のイリジウム磁気モーメントが0.5ボーア磁子ほど中心を向いて秩序化した、電荷ギャップの小さな反強磁性絶縁体となる、という実験結果を理論的に説明することに成功した。また、常磁性半金属相と反強磁性絶縁体相の中間には、Weyl点をもった反強磁性半金属相が出現することを検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
投稿中の論文、特に、量子スピンアイスに実験との共著論文の出版がずれ込んでいるが、その他は当初予定していた研究計画はほぼ完遂した。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画はほぼ完遂しているため、研究成果に関する投稿論文の出版に尽力する。
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次年度使用額が生じた理由 |
関連する研究成果の論文出版が遅れているため、その出版費用の確保をするため。また、国際会議でその成果を発表する予定であるため。
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次年度使用額の使用計画 |
国際会議への出張費用、および、論文出版費用として使用する。
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