研究課題
パイロクロア格子構造をもつ希土類(Pr, Yb, Tbなど)局在磁性体は、量子スピンアイス系と呼ばれ、磁化の単極子(モノポール)に起因した量子揺らぎが極低温磁性を左右する。我々は、その最も基本的な理論模型において、その古典スピンアイス領域から冷却とともに、氷のエントロピーを徐々に解放した量子スピンアイス領域にクロスオーバーすることを世界で初めて数値的に検証した量子モンテカルロ計算の論文をPhysical Review Letters誌に出版した。また、Tb2Ti2O7に対する実験結果の解析から、この物質の極低温磁性が我々の量子スピンアイス模型によってよく記述されることを示した論文もPhysical Review Letters誌に出版されることとなった(2016年5月掲載予定)。これらの成果に対して、プレスリリースを行った。Yb2Ti2O7における非弾性中性子散乱スペクトルを説明する理論について日本、アメリカ物理学会などにおいて講演した。パイロクロア・イリジウム酸化物の相対論的局所スピン密度近似LSDA+U法に基づいた第一原理電子状態計算から、Pr2Ir2O7が反強磁性相に近い常磁性半金属であり、Y2Ir2O7では0.5ボーア磁子のイリジウム磁気モーメントが正四面体の中心を向いて秩序化した反強磁性絶縁体である、という実験結果を理論的に説明する論文をJournal of Physical Society of Japan誌に出版した。また、希土類元素をNd,Sm,Euと置換した場合における系統的な電子状態の変化、特に金属絶縁体転移を与えるクーロン相互作用Uの臨界値が減少することを、同じく第一原理計算から明らかにし、日本物理学会において講演した。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件) 備考 (2件)
Physical Review Letters
巻: 未定 ページ: 未定
Journal of the Physical Society of Japan
巻: 84 ページ: 073703/1-5
http://dx.doi.org/10.7566/JPSJ.84.073703
巻: 115 ページ: 077202/1-5
http://dx.doi.org/10.1103/PhysRevLett.115.077202
http://www.riken.jp/en/research/rikenresearch/highlights/8138/
http://www.riken.jp/pr/press/2015/20150821_2/