研究課題/領域番号 |
24740254
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
増田 俊平 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 客員研究者 (90546897)
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キーワード | 量子状態の高速コヒーレント制御 / ボーズ-アインシュタイン凝縮体の制御 / 国際情報交換、アメリカ / 国際情報交換、ウズベキスタン |
研究概要 |
ボーズ-アインシュタイン凝縮体(BEC)をランダムなポテンシャルの揺らぎから長時間保護するための方法を示した研究の論文が採択された、 S. Masuda, Phys. Rev. A 88, 013625 (2013)。早送り理論を離散系に拡張しoptical lattice内のBECの高速コヒーレント制御を可能にした論文が採択された、S. Masuda and S. A. Rice, Phys Rev. A 89, 033621 (2014)。この理論はlatticeやchainなど一般のネットワークモデルに適用可能なので、様々な量子系の制御に用いる事ができる。Optical lattice内の基底状態にBECを短時間で閉じ込める研究の成果をまとめた論文が現在PRLで査読中である。量子状態の高速コヒーレント制御の研究が認められ2013年度日本物理学会若手奨励賞(領域1)を受賞した。2013年8月にモンテレーで行われたPRACQSYS に参加し量子状態のランダムポテンシャルの揺らぎからの保護に関するポスター発表を行った。2013年10月にサマルカンドで行われたDynamics Days central Asiaに参加しlattice系での量子制御に関する講演を行った。2014年3月にAPSにおいてlattice系での早送り理論に関する発表を行った。2014年3月に日本物理学会年次大会において量子ダイナミクスの加速理論に関する招待講演を行った。現在分子の異なる状態間の遷移を高いFidelityで制御するための研究をRice先生と共同で行っており、研究結果を論文にまとめている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ランダムなポテンシャルの揺らぎから量子状態を保護するための新しい方法を提案し論文が採択された。量子状態を長時間擾乱無く保つ事により多くのコヒーレント制御を含む複雑な実験が可能になる事が期待される。BECをoptical lattice内の基底状態に瞬時に閉じ込める研究の成果が得られた。制御ポテンシャルの近似やずれに対して非常に安定な制御であることが数値的な解析から明らかになった。その研究をまとめた論文を投稿した。現在BECにDark Solitonの列を作る研究を行っており、soliton生成に必要な制御外場を早送り理論を用いることによって導いた。この制御は早送り理論とPhase imprintingの組み合わせからなっており、従来の我々が提案した断熱過程の加速の理論よりも幅広い制御を可能にする。この研究成果は異なるエネルギー固有状態への遷移を含む制御を提案する物である。早送り理論をlatticeやchainなどネットワークモデルに拡張した論文が採択された。これらのモデルは多体効果を取り入れるのに適しており、多体系に我々が求めた制御外場をかける事でどのようなダイナミクスが見られるかを調べるための研究を進める準備が整ったと言える。
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今後の研究の推進方策 |
Latticeモデルに量子状態の高速コヒーレント制御の理論を拡張できたことで粒子間に相互作用がある場合の早送りポテンシャルの効果を調べる事が出来るようになった。離散系の理論を多体系に拡張し、平均場近似がなりたつ場合の加速外場をもとめる。少数のサイトからなるLattice系に複数の粒子がある場合を考え、平均場近似を使って求めた加速外場を印加し系のダイナミクスを解析する。相互作用が無視できる場合に比べてどの程度、目的としている状態が得られるのかを調べる。また粒子数やサイトの数を増やし、系が大きくなった場合の影響を調べる。さらに相互作用を大きくしていき、どの程度の相互作用の強さまでなら我々の加速外場が有効であるかを調べる。多体系では波動関数が直交していてもほとんど同じ状態である場合が存在するので、Fidelityに対応する量子状態間の距離を表す適切な量を定義して、量子ダイナミクス加速の精度を計算する。 BECにDark Solitonの列を作るための制御外場を導いたが、それを大きなサイズのBECに印加し出来たSolitonの安定性を長時間にわたって調べる。さらに2次元3次元で葉巻型のBECに同じポテンシャルを印加しSolitonの安定性がアスペクト比に対してどのように変化するかを数値計算により調べる。 分子の化学反応を制御する適切なレーザーパルスをcounter-diabatic methodを用いて提案する。Background stateがあり、それがターゲット状態とほとんど縮退していても有効であることを示す。具体例としてはHCN-HNCの振動準位を介した遷移を考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度に物品購入のため残しておいた助成金が物品購入後少し残ったが年度末で他に旅費などで使用しなかったので次年度にまわす。 次年度に学会に参加するための旅費の一部として使用する。
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