近年多くの研究がなされている量子相関効果の中でも、特に初期状態における部分系間の相関が、緩和過程に与える影響について厳密な解析を行っている。前年度にはJaynes-Cummings(JC)模型を拡張して原子系、光子系に加えて環境系を導入した。具体的には、スピン系が環境系の影響を受けて揺動するとき、初期に全系の状態が高々一励起であるという条件下で、その後の系の時間発展(ダイナミクス)を厳密に解くことができた。また、この初期条件下では、JC模型は横方向の交換相互作用をもつ2スピン系と等価であることが分かった。今年度はこれを踏まえ、より一般的なスピン系へと模型を拡張し、初期相関が緩和現象に与える影響の解析を行った。すなわち、相互作用する2つのスピン系を考え、内部相互作用をより一般的なハイゼンベルグ型に拡張した。このとき、全系の初期状態は高々一励起であるという条件下で、全系及び縮約系のダイナミクスを完全に定めることができた。 今年度の主たる結果は、1)各スピンがそれぞれに独立な環境と相互作用をするという2環境模型に対して、全系及び縮約系の密度行列の解析解を厳密に求めることができた。具体的には、各部分系の物理量の期待値、スピン間の相関を評価するためにコンカレンスを求めて、それらの振る舞いを調べることができた。その結果、スピン間の内部相互作用や環境の性質、初期状態における相関の有無などによる振る舞いの変化の特徴をとらえることができた。またさらに、2)2つのスピン系が同一の共通環境と相互作用をする場合をも取り上げることができた。この場合も厳密な時間発展の解を求めることができ、1)と同様に部分系の時間発展、スピン間の相関を詳細に調べることができた。 本研究課題の成果はこれまでに論文発表、学会発表を行い、さらに現在、投稿予定論文を準備中であり、2014年9月の日本物理学会において発表予定である。
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