研究課題/領域番号 |
24740261
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
宮崎 淳 電気通信大学, 先端超高速レーザー研究センター, 特任助教 (50467502)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 非平衡系 / 不規則系 / 拡散・移動現象 / 自己組織化現象 / 励起子 / ナノ粒子 / レーザー顕微鏡 / 時間分解蛍光測定 |
研究概要 |
空間的に不均一な媒質中に生成された励起子は、エネルギーの緩和を伴いながら拡散(ホッピング)する。この現象は有機太陽電池、発光素子においてその効率を左右する重要な要因であるが、本質的に非平衡系であるため、その取り扱いについてはまだ確立されていない。本研究では、不均一広がりをもつ半導体ナノ粒子が配列された系における励起子のホッピング・輸送現象に着目し、多色レーザーを光源に用いた時間分解顕顕微鏡を用いた測定からそのダイナミクスを系統的に明らかにすることを目的とした。本年度は主に次の2点の成果を得た。 ・非線形光学過程により生成される多色パルス光、および変調周波数の異なる二色の半導体レーザーを用いた、レーザー顕微測定システムを構築した。製作した装置を用いて量子ドットの凝集体を対象とした測定をおこなった。その結果、サイズの異なる粒子が数百nmから数μmのドメインを形成し分離して凝集している様子を観測することができた。 ・バルクの量子ドット系格子系を対象とした対象とした時間分解蛍光スペクトル測定を系統的に行い、励起子ダイナミクスの温度依存性、励起波長依存性を明らかにした。結果、低温では局所的にエネルギーの小さい粒子に励起子がトラップされやすく、室温程度では繰り返しホッピングが起こるが、欠陥等に起因する粒子に辿りついた場合にはクエンチングされることが分かった。さらに数値シュミレーションを行い、実験結果を定性的に説明することができた。これらの結果はより効率のよい有機太陽電池や発光素子の実現に向けた重要な知見を与えると期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は計画通り、多色レーザーを用いた顕微システムを構築した。研究計画では非線形光学過程により発生したパルス光を用いる予定であり、実際にこれを光源に用いた顕微測定を行った。しかしパルス光の繰り返し周波数が遅いため、実際の測定には時間がかかることが問題点として明らかになった。そこで光源に半導体レーザーを用いた顕微システムを構築した。これを光源に用いることで1ピクセルあたりの測定時間を数ミリ秒に短縮でき、数十秒で1つの画像を測定することができた。また顕微システムの構築と並行して、バルク試料に対する量子ドット格子系の時間分解蛍光測定測定を行い、励起子ホッピングの温度依存性、励起波長依存性について明らかにした。さらに数値シュミレーションを行い、実験結果を訂正的に説明することができた。これらの進展は全体としておおむね計画通りである。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は時間分解測定法と顕微鏡を組み合わせた測定を行う。最初に単一光子時間分解蛍光システムを構築する。昨年度購入した低ジッターのフォトンカウンティングAPDを検出器に用いる。半導体レーザーを利得スイッチングさせることでピコ秒の光パルスを発生させ、これを光源として用いて最初は100ピコ秒程度の時間分解能を目指す。また実験での測定データからランダム媒質中の励起子ホッピングダイナミクスを定量するための理論・解析方法の構築を進め、実際に量子ドット格子系に適用し、ホッピング距離等の重要なパラメータの定量評価を行う。また、顕微時間分解測定の結果から励起子ホッピングをナノ構造との関係との関係から明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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