研究実績の概要 |
本年度は,ネットワークの時間変化情報として、イベント時系列データに注目した,多くの社会ネットワークにおいて,相互作用データはイベント時系列として得られる.メール、メーセッジ,通話の発生時刻がその例である.ネットワーク構造はデータを時間的に積分することで得られるが、結果的に時間パターンに関する情報が欠落する.しかし実際、多くの社会活動パターンに共通する特徴として、イベント活動はバースト的(時間的不均一性)であるとの報告がある(Barabasi, A. L. , Nature, 2005).一方で積分化ネットワークは社会的関係性に関する情報を提供し、多数事例でリンク数(次数)が冪分布に従うことが知られている(構造的不均一性).これらの時間的・構造的不均一性は、ソーシャル時系列データの両面であるが,従来は別々のモデルを用いて説明が為されてきた.これに対して本課題では、相互作用するポアソン過程の集団現象として、2つの不均一性を統一的に説明する確率モデルの構築を行った(Aoki, Rocha & Gross, PRE, 2016).特定の条件で積分化ネットワークは次数がべき分布(スケールフリー性)を再現すると共に,各ノードのメッセージイベント時系列からはバースト性が観測された.さらにモデルのマスター方程式を導出し,これを母関数解析することでメッセージ送信のパラメータに応じて,次数分布の分散が発散し転移が生じることを確認した.同時にメッセージイベントの時間間隔がべき分布となることを導出した.
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