研究課題/領域番号 |
24740267
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研究機関 | 岡山県立大学 |
研究代表者 |
坂口 浩一郎 岡山県立大学, 情報工学部, 助教 (10551822)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 音響メタマテリアル |
研究概要 |
本研究の目的は負の実効密度および負の実効弾性率を実現する音響メタマテリアルの構造を探索することである.メタマテリアルとは波長以下の周期構造を持つ人工媒質を指す.任意の特性を発現する構造を探索するには様々な構造パラメータについて解析する必要があることから,本研究では計算機シミュレーションによる検討を行うこととした. そこで当該年度は第一に,適切なシミュレータの導入および使用方法の習得を含めた環境整備を目的として計画を立案した.これについては有限要素法をベースとした汎用物理シミュレーションソフトCOMSOL Multiphysicsを導入し,関連するワークショップや学会に参加するなどして使用法の習得に努めた.その成果として,ヘルムホルツ共振器を周期配置した導波路の音波伝搬解析を行い,共振器の固有周波数と配置周期に依存した禁制帯が生じることを透過スペクトルから確認した.またこの結果は申請者が独自に作製したFDTDシミュレータによる計算結果とも一致しており,目的に応じた解析手法を選択できる体制が整った. 第二に,負の実効密度および負の実効弾性率を実現する構造探索として,ヘルムホルツ共振器を結合させた構造を検討した.この構造に対してCOMSOL Multiphysicsを用いた音波伝搬解析を行った結果,結合なしの場合の禁制帯中に透過モードが現れる興味深い透過スペクトルが得られた.これに関する詳細な考察は次年度に行う.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概要で述べたように,当該年度の第一目的はシミュレーション環境の整備である.これに関して当初の計画通りシミュレータを導入し,使用方法もある程度習得できた.その成果として,ヘルムホルツ共振器を周期配置した導波路のモデリングおよび音波伝搬解析によって共振器の固有周波数と配置周期に依存した禁制帯をもつ透過スペクトルを取得し,本研究における有用性を確認した.またシミュレータの使用方法については大学院生に対する教育も行った.これによりさらに効率的に研究を進める体制ができた.負の実効密度および負の実効弾性率を実現する構造に関してはヘルムホルツ共振器を結合した構造を考え,基本的な解析を開始した.以上より,現在までの達成度は概ね順調であると言える.
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今後の研究の推進方策 |
当該年度に導入したシミュレータを用いて,ヘルムホルツ共振器を結合した構造に対する音波伝搬解析を行い,解析結果の詳細な検討と考察を行う.まず,2つのヘルムホルツ共振器を結合した基本構造に対して,構造パラメータを変化させて音波伝搬解析を行い,その固有周波数や透過スペクトルのモード同定を行う.ここから得られる知見を元に,共振器のペアを周期配置した場合の透過スペクトルについて考察し,音響工学上の応用についても検討を行う.また,負の実効密度と負の実効弾性率を実現する他の構造についても,同時に検討を進める.
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度は導入するシミュレータを慎重に検討するため,COMSOL Multiphysicsについてまず1ライセンスのみ購入し,本研究における有用性を確認した.これにより,繰越金(1,079,585円)が生じた.次年度の研究費は主に追加ライセンスの購入および保守費,旅費などに充てる予定である.
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