研究課題/領域番号 |
24740271
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
NAYAK K.Prasanna 電気通信大学, フォトニックイノベーション研究センター, 特任助教 (70551042)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ナノ光ファイバー / 量子光学 / ナノ光加工 / 量子情報科学技術 |
研究概要 |
24年度の最大の成果はナノ光ファイバーへの共振器組込み加工にフェムト秒パルスレーザー加工法を適用し、新しいナノファイバー共振器組込みを実現した事である。共振器組込み法として当初は、既に報告者が実証した集束イオンビーム加工による方法を考えていたが、イオンビーム照射に伴う光ファイバーのチャージアップによりナノファイバーへの共振器加工の成功確率が低く共振器作製のルーチン技術としては必ずしも適さない事が明らかになった。また、イオンビーム加工では共用の大型装置を用いるため様々な共振器構造を作成し最適構造を明らかにするという点でも問題があった。本年度において開発したフェムト秒パルスレーザー加工法は、ナノ光ファイバー上にフェムト秒パルスレーザー光の干渉縞を集光し加工する技術である。今回見いだされた事実は、フェムト秒パルスレーザー照射によりナノファイバーの照射裏面でアブレーションが発生し、干渉縞パターンに対応する等間隔のナノクレーター列が加工される事である。集光レーザー光の幅は60umとナノファイバー直径0.6umに比べ100倍も大きいものであるにも関わらず、ナノクレーター列が加工された事は、ナノファイバー自身が円柱レンズとして機能し、照射レーザー光がファイバー裏面に再集光されたことにより実現したものと理解できる。この再集光加工はファイバー自身による自己制御加工であるので、ナノファイバーの位置揺らぎ等の影響を受けずに裏面にナノクレーター列を精度良く加工できる。このナノクレーター列はナノファイバー上でブラッググレーティングとして機能し、更に最近では、ナノクレーターの直径はレーザー光のビームプロファイルに応じて変化するため、照射条件を制御すればナノクレーター列が良好な共振器として振る舞う事も見いだされている。この成果は本計画の目的達成に予測を越えた新しい道を切り開いたものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本計画の達成の最大の要件は、ナノ光ファイバーに自在に特性を制御した光共振器機能を組み込む事である。24年度に開発したフェムト秒パルスレーザーによるナノファイバーの干渉加工法は、当初の予測を越えた全く新しい自在性のあるナノファイバーへの共振器組込み技術を実現したものであり、本計画に新しい骨格技術を創出した。この成果は、関連分野で世界的にも注目を集めているものであり、当初の計画を大きく越えるものである。しかしながら、本年度においては当初計画に提案記載した冷却原子組込みの予備実験には進む事は出来なかった。これは、フェムト秒パルスレーザー加工法の予測を越えた成果により時間的に対応できなかった事によるものであるが、予定計画の達成度の意味ではマイナス点とせざるを得ない。結果として、予測を越えた進展と実施に達しなかったマイナス点を合計して「おおむね順調に進展している」ものと自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究推進方策は以下の通りである。まず、前年度に開発したフェムト秒パルスレーザー加工法を最適化しナノ光ファイバー共振器作成技術として完成させる。更に、ナノ光ファイバー共振器にピエゾ素子を組込み、ナノファイバー微小延伸による共鳴波長掃引法を確立する。完成したナノファイバー共振器をレーザー冷却原子真空装置にインストールし原子系の光応答を系統的に計測する。 ナノ光ファイバー共振器作成技術の最適化には、数値シミュレーションにより種々のナノクレーター直径分布についての光応答特性を予測設計する事が必須である。シミュレーションと加工条件の対応を明確にする事により最適ナノファイバー共振器作成技術を完成させる。用いるレーザー冷却原子としてはセシウム原子系を用いる。セシウム原子D2遷移について、自然放出制御及び、共鳴吸収光学濃度の制御実験を行う。制御された単一光子発生や量子メモリー等の基礎実験を実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は備品としてワークステーションを購入する。本備品は、ナノファイバーナノクレーター列の光学応答の数値シミュレーションを高速化するために用いる。数値シミュレーションによる予測設計と実験との比較検討を詳細にかつ頻度高く実施することは本年度の計画を加速的に実施するために不可欠なステップである。高速ワークステーションの導入によりナノ光ファイバー共振器作成技術の最適化作業が効率良く行える。また、ファイバー関連諸部品やファイバー系の冷却原子真空装置への組込み等に必要な部品等を消耗品として購入する。研究成果の発表のため参加する国際会議参加費や旅費も同時に申請する。
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