単一原子/光子の操作と制御は近将来の情報通信の基幹となり得る量子情報通信の基礎を与える要素である。とりわけ、ファイバー通信網に組込み得る方法の開発は必須である。本計画では通信用光ファイバーの一部を信号光の波長以下にしたナノ光ファイバー上に原子を配置して、その光量子特性を操作制御する方法を開発している。 本年度においては、ナノ光ファイバーに光共振器を組込む方法を研究開発した。方法は、第1年度に開発したフェムト秒パルスレーザーによる多光子加工法によるフォトニック結晶光ファイバー技術の制御性を高め拡張する事である。要点は、ナノファイバー上に加工したナノクレータの直径分布を制御し、実効的な屈折率変化を急峻にする事である。急峻な屈折率変化部は反射鏡として振る舞うので、結果としてナノファイバー上に光共振器が組込み得る。 この方法により良質の共振器が実現されている。本計画に必要なフィネス40程度の共振器は透過率85%が実現されている。フィネスの高いものでは500に達するものもある。Q値では100万を越えるものも実現できている。このナノファイバー共振器はピエゾ素子により延伸することにより共振波長は同調可能であり、原子の共鳴遷移への同調も実現できる。作製したナノファイバー共振器をレーザー冷却原子(セシウム)系と組み合わせることにより原子の光学濃度が増強される事を実証しつつある。 また、ナノ光ファイバーへの共振器機能組込み法として外部ナノ構造と組み合わせる方法を研究した。中央部に欠陥を有するグレーティングと単一原子(量子ドット)を担持したナノファイバーを組み合せ、ファイバーモードヘの自然放出増強の観測に成功した。これは、ナノファイバー上での共振器QED効果の実証として初めての例であり、外部ナノ構造によりナノ導波路上での共振器QED効果を制御した最初の例でもある。
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