研究課題/領域番号 |
24740274
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
星野 正光 上智大学, 理工学部, 准教授 (40392112)
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キーワード | 電子分光 / プラズマ素過程 / 弾性散乱断面積 |
研究概要 |
本申請は、国際熱核融合実験炉(ITER)のような核融合プラズマ中で起こる緩やかな拡散現象によって、プラズマを形成する荷電粒子が周囲の壁と相互作用し、壁材の劣化やそこから発生する不純物の影響を探索する素過程の研究である。具体的には、ITER計画において使用を検討されているタングステン、ベリリウム、炭素等の金属表面とプラズマ中で最も軽く輸送されやすい低エネルギー電子との相互作用によるエネルギー授受の定量測定について、これまで申請者らが行ってきた電子分光技術を応用することで詳細な知見を得るという内容である。本研究では、金属表面による散乱電子の角度分布を精密に測定し、表面を構成する原子1個による散乱電子の理論計算と直接比較することで、表面における構成原子の役割と、プラズマ-壁の相互作用を理解し、今後の壁材としての材料選定やプラズマ診断に知見を得る基礎研究を行うことが目的である。 2013年度は、昨年度ほぼ完成した電子分光装置および真空排気系を用い、テスト実験を行った。昨年度購入した超高真空を達成するための真空排気装置で真空槽の排気および電子分光装置の性能テストを行った。金属表面を標的とした電子分光実験はこれまでの気相とは異なり、今まで以上の超高真空が必要となるため、ベーキングや材質の選定などに予想以上の時間を要したが、電子ビームの生成および信号強度を確認することができた。また、すでに行われているタングステン標的に対する断面積の理論計算から、実験で測定されるであろう予想の結果を算出し、測定領域や測定範囲の見積もりを行った。最終年度早々にはプラズマプロセスの素過程として重要な電子散乱断面積を発表できると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までで一通り準備が整い、真空排気およびビームテストの段階まで進んでいる。真空は実験の性質上予想以上の排気時間を要したことから、すべて計画通りではないが、その遅れを取り戻すために、現在もなお本測定を行うためのビーム調整を行っているところである。上でも述べたようにタングステン標的に対する断面積の理論計算から見積もられる予想実験のシミュレーションも終了し、測定範囲や測定条件の算出も済んでいる。以上より、実際に入射エネルギー100eV程度の電子とタングステン、ベリリウム表面との散乱断面積の角度分布測定を行うことで、本研究課題の目標を達成できると考えている。ここまでの途中経過と開発状況は、2013年日本物理学会秋季大会にて発表された。
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今後の研究の推進方策 |
すでに述べたように初年度で実験装置はほぼ完成し本測定の準備が整った。これまでの申請者らの電子分光装置に対する経験から調整にはそれほど多くの時間をかけることはなく、目的である金属表面の電子散乱実験を開始できるものと考える。測定されたデータは、これまで過去に行われた例がないため、多方面から再現性や信頼性の確認を行い、速やかに研究成果を公表できることが期待される。 万が一、最終年度に、何らかのトラブル等により順調に進行しなかった場合には、一度気相電子分光実験のセットアップに戻し、関連する重要な分子である水素分子と電子の衝突による断面積の絶対値測定を行い、参考データとして発表することも計画している。
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