研究課題/領域番号 |
24740277
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研究機関 | 国立情報学研究所 |
研究代表者 |
堀切 智之 国立情報学研究所, 情報学プリンシプル研究系, 特任研究員 (40530275)
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キーワード | 励起子ポラリトン / ボース・アインシュタイン凝縮 / マイクロ共振器 / 量子井戸 / ポラリトンレーザー / 高励起 |
研究概要 |
半導体マイクロ共振器中に生成された励起子ポラリトン凝縮を閾値直上から100倍以上の密度に至るまでの様々な励起密度における振る舞いを実験的に観測することが出来たため、その成果を論文にした(Journal of Physical Society of Japan 82, 084709 (2013))。励起子ポラリトンに用いる励起子生成にはガリウムヒ素量子井戸を用いて行った。励起子束縛は高温において破れるため、量子井戸を埋め込んだ共振器サンプルの温度変化を行う事で、低温励起子ポラリトン凝縮から高温の(通常の半導体)レーザー動作への変化が見られる。我々の研究では、従来考えられていたように低温であってもより高励起領域までレーザーへの転移が起きず特徴的な振る舞いを示す事が、フォトルミネッセンス強度、エネルギー、線幅、また2次相関関数データからわかった。また低温高励起領域では、メインピークとなるエネルギースペクトルの他のサイドバンドスペクトルが高エネルギーにあらわれる実験結果を時間分解分光により観測した。この結果早い崩壊により熱平衡に達しない非平衡系でかつ電子-正孔対が存在する場合、半導体中多体効果により高エネルギー側にのみ付加的なサイドバンドが現れる事も明らかになった。その結果として対象系は、熱平衡にあるボース・アインシュタイン凝縮体とは異なる新しい相であり、非平衡性が強いレーザーの一種と見なせることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度研究実施計画においては高励起ポラリトンBECが生成される条件を求め、強結合にある事を示すために(レーザーとポラリトンBECとの違いを示す)、次の項目が必要になると挙げている。1.分散関係の測定による有効質量の見積もり。2.閾値付近でのエネルギーシフト測定による、レーザー動作とポラリトンBECの区別。3.高次コヒーレンス関数測定によるコヒーレンスの有無。これらの項目を観測する事で、系の結合状態変化を精密にトレースする事ができるが、これらはすでにクリアーされ既にJPSJにおいて出版されている。 研究実施計画でも述べたようにこれまで理論的な研究も詳しくされてこなかった新しい結果であり、物理解明は始まったばかりであるので、理論面からの研究も非常に重要になる。連携研究者とともに共同で実験理論両面からの研究を行うとした。これに関しては大阪大学の小川哲夫教授研究室および分子科学研究所の鹿野豊氏ら理論家との共同研究をスタートさせていたが、彼らとの共同研究の論文を準備し投稿中である。また平成25年度以降は時間分解分光などの光学測定を重点的に行うと計画していた。ストリークカメラによる時間分解分光などに関して既にデータ取得が行われており、完全に走り出している。既に大量の測定データ取得の結果、第一弾の論文投稿は上記理論家との共同研究結果として実験データを合わせて論文投稿を行っている。また、次に実験データをフルセットで提示する論文の準備をしているところである。 これらにより概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
実験的に観測されたデータのみによってでは系の物理が完全には理解できていない現状であるため、理論家との共同研究をスタートさせており、既に共同研究結果となる理論・実験の比較までを取り込んだ論文投稿中である。マイクロ共振器励起子ポラリトン系の特徴は、ピコ秒オーダーという短寿命性による系の非平衡性であるが、これが長寿命をもつ原子BEC系との大きな差となっており、本系における物理理解の困難につながっている。最近の大阪大学小川哲夫研究室での共振器寿命パラメータとして取り込んだ理論にもとづき、より一層実験と理論との隔たりをなくし高励起ポラリトン凝縮の理解を進展させる。 同時に残りの期間で実験的には空間プロファイルまで含めた高励起凝縮の分光・時間分解測定などを行い、高励起領域におけるポラリトン生成・散逸などの理解を促進するデータ取得を進める。 ポラリトン凝縮が高励起にまで至ると必ず半導体レーザーに移行するというこれまでの定説を覆すべく残りの期間の研究を進める所存である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は実験装置がそろい、追加で購入する必要がでなかったため物品費の使用は生じなかった。旅費に関しては、当初想定程に費用がかからなかった。 論文作成投稿に関して英文校正サービスを利用したために、当初よりその他の使用が増加したが、物品費、旅費などの減少により賄え、全体として次年度使用額が生じた。 英文校正サービスの使用を複数回計画している。また追い込みにかかる実験物品の購入を計画している。 学会参加による出張、共同研究者との議論に関わる出張および共同研究者の招聘を計画している。
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