研究課題/領域番号 |
24740279
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
二宮 和彦 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (90512905)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | ミュオン / ミュオン原子 / ミュオン捕獲過程 / ミュオン特性X線 / ミュオン初期状態 / エキゾチック原子 |
研究概要 |
茨城県東海村J-PARCミュオン施設において、前期と後期の2度のミュオン照射のマシンタイムを行った。1気圧以下の低圧の気体試料条件においてCO、CO2、COS、H2+CO2に対してミュオン照射を行い、ミュオン特性X線スペクトルを取得することができた。測定試料は当初の計画では毒性の強い気体試料は平成25年度に回すことになっていたが、施設側の担当者と協力することで早期に使用可能となったので、一部H24年度に測定予定だった試料をH25年度実施というように実験の順番の入れ替えを行い、COSなど毒性の強い気体に対して先行して実験を行った。 これらの実験から得られたミュオン特性X線スペクトルを解析し、それぞれの気体試料において、気体を構成する原子にミュオンがどのような確率で、どれだけ捕獲されたかを求めた。本研究では低圧条件で初めて得られた実験結果であり、また低バックグラウンドの条件を達成したのでこれまでよりも精度の高い実験結果が得られた。本研究の実験結果は予想していたように、これまで知られているミュオン捕獲のモデルでは説明できないものであったが、モデルを改訂することで実験結果を再現する条件が得られた。具体的にはミュオン捕獲現象に関わる電子の数をパラメーターとし、これを変化させることでミュオン捕獲にどの電子が関わっているのかについて見積もった。本研究では構造の異なる複数の分子を用いているが、分子を構成する各原子に注目するとミュオン捕獲に関わる電子の数はほとんど同じであることが新たにわかり、今回の実験系においては分子構造の影響が比較的小さいことがわかった。これらの結果は2度の学会発表でまとめて報告を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では毒性の強い試料に関して使用許可を得るのに時間がかかると考えられたため、毒性の強いCOSなどの実験はすべて平成25年度を実験で使用する予定であったが、使用許可を得ることができたので、平成25年度で使用予定だったものの一部を平成24年度に使用予定だったものへ入れ替えを行った。 その結果CとOを含む分子であるCO,CO2、COSを試料とした実験をまとめて行うことができ、これらの分子間でミュオン捕獲現象がどのように変化するのかについてまとめて研究を行うことができた。 なお平成24年度に使用予定だった試料に関しては、先行して実験を行った結果余裕のできたマシンタイムにおいて使用する予定であり、そのマシンタイムの取得についても既に完了している。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は実験の予定上、平成24年度に使用予定だった試料の一部を平成25年度に予定していたものと入れ替えを行ったが、あくまで入れ替えなので全体的な実験方針に変更はない。また次年度実施のマシンタイム取得についても既に完了している。 次年度のマシンタイムではより効率の良い実験データ取得のために、遮蔽の改良を行い実験精度の向上を目指す。また今年度得られたミュオン捕獲モデルの改良版を、次年度得られる実験結果への適用を行い、モデルの妥当性の評価を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
|