研究課題/領域番号 |
24740280
|
研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
西内 満美子(高井満美子) 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究副主幹 (70391315)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | レーザープラズマ / レーザー駆動イオン線 / 高エネルギー化 |
研究概要 |
レーザー駆動型のイオンはその類稀な特徴より多方面から応用として着目されている。しかしながら、応用に資するには様々な解決すべき問題点があるのも事実である。その中でもっとも重要な項目が高エネルギー化である。大型の核融合用のレーザーを用いた実験結果として、120MeVまでのエネルギーの陽子の加速が確認されてはいるが、応用を考えた際に必要不可欠な、小型のレーザーからの限られたエネルギーによる実験結果としては数十MeVが最高となっている。このエネルギーを飛躍的に伸ばすため、ターゲットホルダの形を工夫して、レーザー駆動の陽子線にプラズマ中における加速場に追加して、ダイナミカルに作用する加速電場を作用させることを実行する。具体的には、ターゲットを保持するターゲットホルダのイオン発生方向の形状に工夫をほどこす事で実現できると考えている。レーザー駆動プラズマからのイオン発生後に、そのイオンが通過するターゲットホルダ上の穴の形を円錐状にすることで、穴の表面垂直方向に電場を立てる。その電場のソースとなるのは、イオンに先だって発生する大量の高速電子の持ちさるチャージである。 関西研所有のJ-KAREN レーザーを用いて実験を行った。ターゲット上に800nm, 30fs, 10^10のコントラスト,1E21Wcm-2の集光強度でレーザーを45度の角度から集光した。ターゲットはアルミ及びマコール製のターゲットホルダを用いた。穴の形状は、斜面が集光点に対して、45度の傾斜を持つ円錐形状のものである。その結果、発生する電子の温度とイオンの最高エネルギーに差が見られるという兆候がある。この差が、レーザーの不安定性に依るか否かを決定するため精度を上げるべく追実験が必要と考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先に書いたように、今年度関西研所有のJ-KAREN レーザーを用いて実験を行った。実験を精度よく行うためのレーザーの調整を精力的に行い、1E21Wcm-2の集光強度を定常的に実現できるようなシステムを実現した。 さらに、イオンに先駆して発生する電子のもちさるチャージがターゲットホルダの表面に電場を立て、時間的に後に発生してターゲットホルダを通過するイオンに、ダイナミカルに作用させる。 その電場のソースとなる高速電子の温度をオンラインで精度よく計測するための電子スペクトロメータを開発し導入し、ショットごとの電子の温度分布を精度よく計測した。 さらに、その電場の立ち方はターゲットホルダの素材に強く依存すると考えられる。ターゲットホルダの素材として、アルミ(伝導体)とマコール(比伝導体)を選択して、同じターゲットを装着し、同じレーザーパラメータによって照射した。その際に発生する高速電子の温度と発生したイオンの最高エネルギーを比較した。その結果限られたショットの範囲で、アルミ製のターゲットホルダを用いた場合に、高いエネルギーまでイオンが加速される兆候が見られることが判明した。以上の進捗状況より、研究はおおむね順調と考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き実験を行って、加速されたイオンのエネルギーの差がターゲットホルダ自身によるものなのか、其れとも他の要因によるものかを調査する。さらに、ターゲット自身として、現状では、アルミの0.8ミクロンメートルの厚みのものを主に使っているが、 ターゲットの素材を変化させるなどして、ダイナミカルな電場の立ち方、及びその電場のイオンの追加速に及ぼす影響を調査する予定である。 さらに、ターゲットに対して垂直にレーザーを集光するスキームによってイオン加速実験を行い、ダイナミカルな電場の立ち方の影響を調査する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
ターゲットの薄膜の購入。 検出器としてのCR39、及びエネルギーフィルターのための金属薄膜素材の購入。 学会のための旅費。
|