研究課題/領域番号 |
24740281
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
赤松 大輔 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測標準研究部門, 主任研究員 (90549883)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 光格子時計 / 光周波数コム / 精密計測 / レーザー分光 / レーザー冷却 |
研究概要 |
本研究を遂行するにはSr光格子時計とYb光格子時計を同一真空槽中で実現する必要がある。そこで、本年度はYb光格子時計と両立可能なSr光格子時計を立ち上げる事に最も注力した。Sr光格子時計の性能を評価するために、時計遷移を分光し絶対周波数計測を行った。本研究の一つの特色として、時計レーザーを線幅転送により実現する事が挙げられる。本来、「線幅転送」による時計レーザーの開発は来年度以降の予定であったが、これを前倒しして行った。光共振器により線幅狭窄化された1064nmのNd:YAGレーザーの線幅を高速制御可能な光周波数コムを用いることで698nmの半導体レーザーの線幅を狭窄化することに成功した。そして、線幅転送法により狭窄化された半導体レーザーを用いた光格子中のSr原子の時計遷移の分光にも成功した。このシステムを用いて時計遷移の絶対周波数計測も成功した。当初の計画では、磁気光学トラップまでしか想定していなかったので、冷却Sr原子を光格子中に捕獲し、精密分光出来た事は想定を大きく上回る成果である。 Yb光格子時計ための光源開発については、一次冷却光源用レーザーの基本波となる798nmのレーザー及びテイパードアンプ(TA)の製作を終了し、第二次高調波を発生させるために光共振器を設計・製作し399nmの光を発生することにも成功した。また、光格子用759nmのレーザー及びTAの製作も終了し、Yb光格子時計に必要な全ての光源の製作が終了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、光格子による冷却原子の捕獲は想定していなかった。しかしながら、Sr光格子時計のシステムの開発、特に線幅転送による時計レーザーの開発が順調に進んだため、当初の計画を前倒しして、Sr原子の時計遷移の絶対周波数計測を行う事に成功した。一方、Sr光格子時計の開発に時間を割いたため、Sr/Ybの同時磁気光学トラップの実験は来年度以降にずれ込んでしまった。しかし、当初計画では来年度以降に開発を予定していたレーザー光源を含めて全ての光源開発を終了した事は大きな成果であり、当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究により、Yb光格子時計と両立可能なSr光格子時計のシステムを立ち上げる事に成功した。そこで来年度は、Yb光格子時計の立ち上げに専念する。既に光源の開発はおおむね終了している。そこで、レーザー冷却や時計遷移分光のためのレーザーを光周波数コムなどの周波数基準に周波数安定化する事から始める。これらの技術は、前年度までの研究で技術的に確立したため順調に進むと考えられる。8月頃までにはレーザー冷却されたYb原子を光格子中に捕獲し、12月頃までにはYb光格子時計の絶対周波数計測を行う予定である。その後、SrとYb光格子時計を交互に動作できるようなシステムの開発をスタートする。
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次年度の研究費の使用計画 |
Yb光格子時計のために必要な光学素子の購入する。また、周波数安定化を行うための光周波数コムをもう一台立ち上げる必要があるため、そのためのポンプ用レーザー光源などを購入する。その他、周波数安定化に必要な電気回路やサーボコントローラを購入する予定である。サーボコントローラは、市販品を購入する方が手軽だが、節約のため自作する事も検討している。また、二つの光格子時計のタイミングを制御するためのコンピューター制御のためのプログラムやシステムの購入も検討している。
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