研究実績の概要 |
本年度は、まず昨年度に成功したSrおよびYbの同時磁気光学トラップの最適化を行った。同時磁気光学トラップ中のYbの原子数を増やすために、399nm光源の高強度化を行った。具体的には、399nmLDチップに自作ECDLから出力された光を入射し、injection lock法により200mW以上の出力を得ることに成功した。これにより禁制遷移によるSr/Yb同時磁気光学トラップ中でも10^5個程度のYb原子をトラップすることに成功した。 さらに、それぞれの魔法波長(Yb;759nm, Sr;813nm)のレーザー光を磁気光学トラップされた原子集団に照射し、二つの原子を同時に光格子中に導入することに成功した。本研究の技術的な肝は、それぞれの光格子レーザーがもう片方の原子に当たらないようにわずかに離れた位置に二種類の原子を光トラップすることである。当初の研究計画通りSr用光格子レーザーを鉛直方向、Yb用光格子レーザーを水平方向より入射し、ねじれの関係にある光格子レーザーにそれぞれの原子をトラップすることに成功した。 また、所属研究機関で開発された“狭線幅光周波数コム”にSrおよびYbの時計遷移をプローブするためのレーザー(時計レーザー)を位相同期し、狭線幅化を行った。共通の狭線幅光周波数コムに位相同期することで時計レーザーの短期の周波数ノイズがキャンセルされ、測定の安定度向上が期待できるシステムを構築した。 さらに光格子中に捕獲されているSrおよびYb原子の時計遷移の観測にも成功した。観測された時計遷移の線幅はともに20Hz程度であり、これは照射している時計レーザーの照射時間で決まるフーリエ限界線幅であった。
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