平衡より遠く離れた系での揺らぎの特性を自発駆動粒子系の実験・理論を通して解析し,普遍性を抜き出すことを本研究課題では目的とした.この対象として,本年度では(a)界面が固化する系で見られる界面先端形状の揺らぎを示す系,(b)界面で生成した会合体が転移を起こすことにより生じる界面運動を示す系,および(c)自発駆動粒子が運動方向に関して有限の記憶を持つ際の集団系に関してそれぞれ研究を遂行した.以下にそれぞれの研究実績に関して具体的に述べる. (a)混合すると固化する性質を持つ2種類の溶液を用意し,2枚の狭い平行板内に一方の溶液を満たし,他方の溶液を外部より注入した.すると固化と注入による界面の進行が競合することで,様々な界面の進入ダイナミクスが見られることがわかった.また特に枝型の分岐をしながら進入する様相に関して数理モデルを構築し再現を行った.本研究成果に関しては現在投稿論文として取りまとめている. (b)界面近傍で界面活性剤の会合体を生成する系で,界面が球状突起の伸展・収縮を示すことがこれまで見出されていた.また小角X線散乱・小角中性子散乱により界面で生成した会合体が転移を起こすことを示唆するデータを得ていた.本年度はこれらをあわせ,会合体の転移により界面運動が生じる機構を提唱した論文を取りまとめ現在投稿論文として投稿中である. (c)自ら一定の速度で運動し続ける自発駆動粒子の集団挙動に関して,これまでは主に相互作用の特性と生じる集団挙動の関係が着目されていた.本研究ではこれに対して,粒子自体がもつ記憶の効果を導入し,それにより生じる集団運動の相図を網羅的に探索した.また,相図の相境界に関して簡便なモデルから理解できることも見出した.本研究成果は現在投稿論文としてPhys. Rev. Lett.誌に受理された.
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