研究課題/領域番号 |
24740297
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
森下 徹也 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノシステム研究部門, 主任研究員 (10392672)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ナノシート / シリコン / シリセン / 第一原理 / 分子動力学 / 有機修飾 |
研究概要 |
平成24年度は、deanol基がSi(111)表面に吸着したシリコンナノシートを対象とした。実験的には有機溶媒反応において合成されているが、構造等の詳細は不明であった。本計算では、deanol基の吸着構造を密度汎関数理論(DFT)に基づく構造最適化と分子動力学計算から明らかにし、deanol修飾シリコンナノシートの単層状態における電子状態を解明した。 まず候補となる複数の構造に対し構造最適化を行い、各構造のエネルギー比較を行い候補構造を絞り込んだ。その後、各候補構造に対し300 K の分子動力学計算を行い有限温度下での構造安定性を検証し、最終的に実験結果と調和的なシート構造を得ることができた。deanol基は酸素原子がSiのダングリングボンドと結合することで、シート面に垂直に近い形状で吸着することがわかった。吸着によりSiシートは若干ひずみが生じるものの、(111)面は安定に保持されていた。 deanol修飾ナノシートの構造確定後、BF4アニオンのシートへの吸着を検証した。deanol基修飾ナノシートは、BF4アニオンを電荷担体とする新しいタイプの2次電池電極材料としての利用が考えられており、BF4アニオンの吸着構造の検証は重要である。DFTに基づく計算を実行し、BF4アニオンが吸着した際の安定構造を同定した。さらに吸着前後のナノシートの電荷分布を計算し、アニオンとシート間に電荷移動が生じることを明らかにした。これより、2次電池電極としての機能が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の実施計画では、deanol基修飾Siナノシートの安定構造の同定と電子状態の検証が、平成24年度の実施事項であった。これらは予定通り実施でき、当初の目標通り実験結果と調和的な安定構造を同定することができた。またBF4アニオンの吸着状態の計算も実行して吸着安定構造を明らかにし、吸着の際の電荷移動に関する知見も得ることができた。以上より、当初の計画通り研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
当初はフェニル基修飾Siナノシートを平成25年度以降に扱う予定であったが、共同研究者による実験が予定より進んだため、平成26年度に計画していた多層のフェニル基修飾ナノシートの計算を25年度に前倒して行う方針である。特にシートの積層に関してシート間エネルギーが引力的であるか、複数の計算手法により検証する予定である。また単層のpristineなSiシートであるシリセンが、この1、2年世界的に大きく注目されている。シリセンの物性解明はSi関連ナノシートに関する重要な知見をもたらし、有機分子修飾ナノシートの理解にも大いに役立つ。そのため25年度以降はシリセンの基礎物性の解明も同時に進めていくことにする。特にシリセンを保持する基盤材料がシリセンに与える影響に注目しながら研究を推進する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の支出は旅費を除いて概ね予算配分に近いものであった。旅費に関しては、当初予定していた海外訪問が訪問先の研究者の健康問題で延期となったため、外国渡航旅費の30万円近い予算を25年度以降に繰り越すこととなった。 25年度予算は以上を鑑み、旅費の配分を多めにしたものとなる。24年度研究成果の発信を目的とした学術会議への参加旅費、さらに論文発表のための論文投稿料、別刷り印刷代なども計上する。物品費に関しては当初の予定通り、生成データのストレージを目的とするファイルサーバやデータ記録メディアの購入を予定する。
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