研究課題
本研究では、近年注目されている2次元ナノ物質であるSiシート(シリセン)、特に有機分子修飾されたSiナノシートの構造と電子物性の解明を実施した。平成24年度は、deanol基が吸着したSiナノシートを対象とした。deanol基の吸着構造を第一原理分子動力学計算から明らかにし、deanol修飾ナノシートの単層状態における電子状態を解明した。さらにこのナノシートの2次電池電極への適用を実験グループと共同で実施し、電池としての動作確認に成功した。平成25年度は、金属基板上のpristineなSiシート(シリセン)の構造形成と、層状に積み重なったフェニル基修飾Siナノシートを研究対象とした。シリセンに関しては従来のAg基板だけではなく、Al基板上でも形成できることを明らかにした。フェニル基修飾シートに関しては、シートが重なった場合の層間相互作用を評価し、この系におけるファンデルワールス力の重要性を明らかにした。平成26年度は、Ag(111)面基板上のシリセンにおける酸素分子の反応過程と、フェノール基修飾されたSiナノシートを扱った。Ag基板上シリセンに対して酸素分子が近づくと、表面のSi原子とすぐに反応し分子解離が生じ、酸素原子がSi-O-Siのブリッジサイトに位置する構造を形成することがわかった。またフェノール基修飾Siシートの安定構造と電子状態を調べ、Siシート数の増加に伴いバンドギャップが減少することを見出した。同様な振る舞いがフェニル基修飾シートでも確認された。本研究の実施により、有機分子修飾されたナノシートの基礎物性が明らかになり、それを用いたデバイス応用が実現された。Siナノシートの将来のデバイス応用にあたり本研究成果は有用であり、今後の2次元材料の発展に貢献することが期待される。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 3件) 備考 (1件)
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https://staff.aist.go.jp/t-morishita/index_jp.html