研究課題/領域番号 |
24740298
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
吉澤 和範 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (70344463)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 地球内部構造 / 上部マントル / リソスフェア / アセノスフェア / 表面波 |
研究概要 |
本研究では,マルチモード表面波を用いて高精度な3次元S波速度構造モデルを構築し,それを元にリソスフェア-アセノスフェア境界(LAB)の空間分布を求め,上部マントルのダイナミクスを解明する上で重要な鍵となるLABに関する新たな地震学的知見を得ることを目的としている.今年度はまず,高密度な広帯域地震観測網が展開されている豪州・北米・北東アジア地域の観測波形記録の解析を行った.特に豪州地域に対しては,新しい3次元異方的不均質構造モデルを構築し,本地域直下のリソスフェア-アセノスフェア境界の3次元的な空間分布や境界層の厚さ分布の推定を行った.その結果,特に複数の大陸塊が集合した境界域に相当する豪州大陸中央部の直下において,LABの厚さがその周囲に比べ相対的に薄く,特にその直下のアセノスフェアでは顕著な鉛直異方性(SH>SV)が観測されることが明らかとなった.この成果は,国内および国際学会において発表し,現在,国際誌に投稿準備中である.なお,この新しい豪州の3次元モデルは,豪州大陸における上部マントルの標準3次元モデル構築の際の基準モデルの一つとしても利用され,その成果を国際誌に発表した. また北米地域に現在展開されているUSArrayを用いた2観測点間の波形解析による表面波の位相および振幅解析も進めている.新たに開発した2点間波形フィッティングの手法を応用して,北米地域全域の3次元速度構造および減衰構造の復元へ向けたデータ収集を進めている. なお,本研究では大量の観測記録を非線形波形フィッティングの手法を用いて解析するため,今年度新規購入した計算機を活用しつつデータ収集作業の効率化をはかり,豪州以外の地域(主に北米,北東アジア,太平洋)についても,新しい上部マントル3次元モデルの構築およびLABの空間分布復元を進めていく予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,特に豪州地域,北米地域および北東アジア地域における新たなマルチモード表面波の解析を行い,基礎データの収集を行った.また特に豪州地域に関しては,新しい3次元異方性モデルの構築を行うと同時に,当初は2年目に計画していたLABの空間分布復元と異方性との関係まで検討することができた.今後はさらに他地域についても,同様の解析を進め,地域毎の違いについてもより議論を深める予定である.
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今後の研究の推進方策 |
今後も継続的に豪州・北米・北東アジアの各地域における観測記録のさらなる解析を続け,それらを用いた各地域の3次元モデル構築,さらにLABの空間分布の復元を進める予定である.今年度に新たに得られた知見として,海洋域のリソスフェアーアセノスフェア境界近傍の異方性構造についてもマルチモードの情報を用いて復元することの重要性を示唆する結果も得られたため,従来,基本モード表面波によるモデルで議論されてきた海洋域においても,高次モードの情報まで含めて上部マントル構造の解析を行うことを計画している.また,減衰構造については,特に高密度かつ精度の高い観測網の展開されている北米地域を主な対象として,3次元減衰モデル構築へ向けた解析を進めて行く予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
備品・消耗品に係る経費節減や,業務の都合により当初予定していた海外出張を取りやめたことで生じた使用残額について,25年度に開催される複数の主要国際学会での研究成果発表のための出張旅費および新たな計算結果を保存するための消耗品(ファイルサーバー)の購入に使用する予定である.
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