電磁誘導の場合について、成層構造をもつ媒質中を伝搬する弾性波によって励起される電磁場変動の表現式を得た。深部の電気伝導度によって期待される電磁場変動の振幅が影響をうけること、弾性波と電磁場変動の位相差が比較的狭い範囲に限定され、それゆえ位相情報が変換メカニズム推定に有用であること、などが示された。 また、単純な構造境界を持つ場合について、数値解を検討した。この研究を開始する以前にすでに実施者が応力磁気効果について得ていた結果、および実施期間中に他の研究者によって発表された界面導電効果に関して得ていた結果と合わせることで、構造境界が存在する場合の特性のいくつかが明らかになった。 さらに、周波数領域で得られた解をフーリエ変換することで、二層構造の場合についての時間領域解を得た。これによって、時間領域のままで観測値と理論値を比較することが可能となった。 得られた表現式にもとづき、主目的である「地震時に観測される地磁気変動が既知のメカニズムで説明できるのか」について議論した。電気伝導度などのパラメータの選択によっては、変化の存在自体は説明できるものの、まれに観測される地震波到達前の変動については、電磁誘導によっては説明できそうにない、という結論が導かれた。
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